出版社内容情報
プロレスに「最強」を復権させる!――かましてなんぼですよ、この世界は
日経小説大賞『散り花』に続く、美しく切ないプロレス讃歌第2章
どんな遺恨も因縁も、リングの上で白黒つける。そうでなければ夢がない。一度リングで“死んだ”男の死闘が、光を失いかけたレスラーたちの心に火をつけた――
札幌での立花と一ノ瀬の試合。週刊リングの寺尾は、一ノ瀬が立花の狂気を引き出したと書いたが、三島の印象は違った。一ノ瀬は立花の世界に引きずり込まれたのだ。この試合で終わってもいいと思わせる快感にも似た昂ぶり。甲斐の世界が対戦相手だけでなく観客をも手玉に取り、会場全体を支配するものなら、立花は二人だけの世界にしてしまう。一ノ瀬はそれに引きずり込まれ、呑みこまれた。立花はなぜジャパンに戻ったのか。総合格闘技への出陣は意外ではなかった。もともとそのスキルはあった。しかし、立花はプロレスに復帰した。(本文より)
内容説明
どんな遺恨も因縁も、リングの上で白黒つける。そうでなければ夢がない。一度リングで“死んだ”男の死闘が、光を失いかけたレスラーたちの心に火をつけた。日経小説大賞『散り花』に続く、プロレス讃歌第2章。
著者等紹介
中上竜志[ナカガミリュウシ]
1978年生まれ。奈良県出身。高校卒業後、様々な職業を経て、2022年『散り花』で第14回日経小説大賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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シャコタンブルー
59
久しぶりのプロレス小説だったがやっぱり激熱だった(笑)登場するプロレスラー達の言葉の荒々しさに驚かされる。控室や試合でもいつも喧嘩しているような索漠とした雰囲気が漂う。馴れ合いは全く無く実力が物言う世界だ。仕事かそれとも真剣勝負か。関係者の事前打ち合わせの様子も生々しい現実が描かれていた。そしてリング上での真剣試合の凄まじさは半端なかった。パンチ、キック、ラリアットで血と汗が飛び散り本気のバックドロップ、パイルドライバーにより失神どころか再起不能にもなりかねない。「死んでもいい」という狂気が宿っていた。2025/01/26
道楽モン
54
デビュー作『散り花』で、プロレス小説とハードボイルド文体の融合という独自の境地を切り開いた作者による待望の第2作。すでに完成された世界観の中で、架空の団体や複雑な人間関係が生き生きと動き出す。実在モデルに依存せず構築された業界描写は、プロレス愛好家にはもちろん、一般の読者にも興行界という縮図を通じて社会の現実を感じさせる仕上がり。驚くべきはハードボイルド文体と試合描写との抜群の親和性で、想像力を強く刺激し、臨場感に満ちた描写が読者を引き込む。勢いと完成度の高さに唸らされる一冊。この路線を何冊か読みたい。2025/04/06
団長
39
図書館で見かけた本。プロレス好きにはたまらない1冊ですな。この本はやはりプロレスを題材にした「散り花」の続編で、作者と言うか昭和から平成、四天王や三銃士時代のプロレスファンが理想としていた強いプロレスが描かれています。それは作られた試合だけでなく、いざと言う時にシュート対応出来る、凄みのある目ん玉の飛び出る様な、ど真ん中のストロングスタイルなプロレス。全体的にやはり悲壮感は漂うけど、概ね満足です。インディーの扱いが雑と言うか、昔のメジャー団体のそれなのも作者のプロレス観なのかな。俺はそこは違うんだけどね。2025/02/05
rosetta
30
★★✮☆☆2022年の14回日経小説大賞『散り花』の続編。視点人物を変えた四つの短編集。人物とそれぞれの関係が複雑に絡み合い過ぎてついていけない。はっきり言って、繰り返し目や耳にする現実のプロレスでもヒエラルキーとか所属とか分かんないのに、1冊の小説で理解出来るわけがない。だから登場人物表とか付けて欲しいのにそれもない。四話目の一章が古い人間関係を一通り纏めているからそれをプロローグにするという手もあったはずだし、それらがあれば星一つ増やしていた。断言するが編集者が無能で、これじゃ作者が可哀想。2025/04/14
tetsubun1000mg
22
昨年デビュー作「散り花」の作家だと気が付いて迷いなく選んだ一冊。 本作はデビュー2作目という事だが、冒頭のベテランレスラーのイラつきや凄まじい試合の様子に引き込まれてしまう。 前作にも登場した立花が今回はカギを握る役となっている。 最初は立花の参戦理由が分からないのだが、むやみに語らない武骨なプロレスラーの矜持がだんだんと伝わってくる構成が良い。 いろんな見方がある日本のプロレスだが「俺が一番強い」「プロレスが地上最強の格闘技」という筆者とプロレスラーの言葉と試合に熱く表現されていると思いました。2025/02/02