出版社内容情報
本書は、過去30年にわたって続く大きな環境変化と想定外の事態が頻発する不確実性の時代にあって、日本企業の雇用・人事管理担当者、また、広く、雇用・人事システムに関心を持つ方々に、今後の雇用・人事システムのあり方を考え、再構築するための「羅針盤」や「海図」、つまり、基本となるフレームワーク・考え方・知識を提供するもの。
本書の執筆のきっかけは、まず、コロナ下で流行語になったジョブ型雇用に関して氾濫する誤解を正したいという強い思いだ。また、企業側が導入を迫られることで進んだ在宅勤務などのテレワークについても、その意義や取り組み方について必ずしも十分な理解が行き渡っているとはいえない。
それは、議論を行うための共通の土台であるフレームワーク・考え方・知識に大きな隔たりがあるからだ。
具体的には、1980年代までに大企業を中心に隆盛を極めたいわゆる日本的雇用・人事システム(および、それを裏で支える情報システム)の本質、その対比としての欧米のシステムの特徴・差異、そして日本、欧米のこれまでの変化、雇用・人事システムの個々の仕組みを評価していく際に不可欠な理論的フレームワークである。こうした議論の土台の共有こそ迂遠のようにみえても、実は理解、認識の共有化にとっては必要不可欠なものであろう。そこで本書では、議論の土台をなす考え方を解説する、いわば理論・教科書編を設けることにした。
一方、理論・教科書編だけでは、特に、日本の企業の人事・雇用管理を担当されている方々に対し、今後の雇用・人事システムの構築を考えるための指針を示すという点においては不十分であろう。なぜなら、理論・教科書編だけでは、ジョブ型雇用の誤解を解いたり、内外の雇用・人事システムを正しく理解することはできても、人事担当者の立場から雇用・人事システムをどう変えればよいかはみえてこないからだ。もちろん、前述のとおり、企業ごとに求められる雇用・人事のあり方は異なるかもしれない。しかし、日本全体を取り巻く長期的・継続的な大きな環境変化への対応から議論を出発させれば、どの企業にとってもベースとして考慮すべき戦略の姿が見えてくると思われる。そこを明らかにするのが本書後半の実践・戦略編である。
以上を踏まえ、本書は、理論・教科書編(ジョブ型雇用と日本的雇用システム)(第1~4章)と実践・戦略編(新たな環境変化への対応戦略)(第5~8章)の二つのパートから構成されている。前半の理論・教科書編では、ジョブ型の誤解を解き、今後のあるべき雇用・人事システムを考えるためには内外の雇用・雇用システムの正しい理解が必要であるという認識に立ち、「人事の経済学」「ジョブ型・メンバーシップ型」という2つのフレームワークに基づいた解説を行う。
内容説明
ジョブ型雇用、人的資本経営、テレワークなど日本企業の人事担当者は様々な課題に取り組んでいるが、その意義や取り組み方について必ずしも十分な理解が行き渡っているとはいえない。それは、議論を行うための共通の土台であるフレームワークに大きな隔たりがあるからだ。人事の経済学は、雇用・人事システムがどのように機能しているのか、その基本的なメカニズム、その背後にある理論を知るために企業の人事担当者が理解しておくべきフレームワクだ。本書は、人事の経済学と雇用システムを解説し、雇用・人事システム変革の際にベースとして考慮すべき戦略を明らかにする実務家必読の書。
目次
序章 なぜ、いま、「人事の経済学」なのか
第1章 ジョブ型雇用とはいったい何か―氾濫する誤解を解きほぐす
第2章 日本の雇用システム―欧米システムとの本質的な違い
第3章 「ジョブ型イコール成果主義」ではない―賃金決定の経済学
第4章 企業組織の情報システム―「対面主義」の経済学
第5章 ポストコロナ・AI時代にふさわしい企業組織・人材・働き方の「見取り図」
第6章 ジョブ型雇用への移行戦略―シニアから始めよ
第7章 ポストコロナに向けたテレワーク戦略―「テレワーク」の経済学
第8章 ゼロサム・ゲームからウィンウィンの関係へ―企業と従業員関係の大変革
終章 人事の経済学の「レンズ」でみた「ミライのカタチ」
著者等紹介
鶴光太郎[ツルコウタロウ]
慶應義塾大学大学院商学研究科教授。1960年東京生まれ。84年東京大学理学部数学科卒業。オックスフォード大学D.Phil.(経済学博士)。経済企画庁調査局内国調査第一課課長補佐、OECD経済局エコノミスト、日本銀行金融研究所研究員、経済産業研究所上席研究員を経て、2012年より現職。経済産業研究所プログラム・ディレクター/ファカルティーフェローを兼務。内閣府規制改革会議委員(雇用ワーキンググループ座長)(2013~16年)などを歴任(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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koji
harmony1116
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