内容説明
寛政四年、鉄明海は仙人沢で一千日行に挑む。食欲を絶ち、物欲を絶ち、情欲をこそげ落とし、自然に同化していく。やがて護摩堂で「飲まず・食わず・眠らず」の最後の「行」に入る。逆さ屏風に囲われ、死臭を放つ鉄明海。さながら幽鬼のごとき鉄明海は輿に乗せられ、入定窟に運ばれる。窟の蓋が下されると、上下左右前後からのしかかってくる重厚な漆黒の闇。おのれの息する音と胸の鼓動音。恐怖にかられ、信じられないような絶叫が鉄明海の口から突然飛び出した。鉄明海は何度も木蓋を突き上げる…。人間の奥深い生に立ち入り、緊張感漂う文章で描かれた傑作時代小説。
著者等紹介
大原正義[オオハラマサヨシ]
1944年大阪市生まれ。茨木市在住。関西学院大学文学部卒業。元大阪薫英女子短期大学助教授。「日本山岳修験学会」・「東アジア比較文化国際会議」等会員。文芸雑誌『水晶群』編集同人として、主に歴史小説を執筆。他に日唐文化交流史(特に遣唐使関係)・即身仏に関する研究論文を『研究紀要』に多数発表(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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