出版社内容情報
神学部元教授・八色(やいろ)ヨハネ先生は去る十一月一日に、一人暮らしをしていた大阪市西成区のアパートで死亡しているのが発見された。享年八十八。先生は生粋の日本人であったが、「約翰(ヨ/ハネ)」と名付けられた。聖書にはヨハネがたくさん登場するが、先生の名前はイエスの先触れとなった洗礼者ヨハネから取られたそうだ。そんなヨハネ先生は、なぜ孤独死を遂げたのか――。
内容説明
神学部元教授・八色ヨハネ先生は去る十一月一日に、一人暮らしをしていた大阪市西成区のアパートで死亡しているのが発見された。享年八十八。先生は生粋の日本人であったが、「約翰」と名付けられた。聖書にはヨハネがたくさん登場するが、先生の名前はイエスの先触れとなった洗礼者ヨハネから取られたそうだ。そんなヨハネ先生は、どのように生き、どのように死んだのか―。信仰とは無縁の人たちにも「人間が生きること」の意味を考えさせられる圧巻の一作!朝日新聞Reライフ文学賞第二回長編部門最優秀賞受賞作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
たっきー
12
第2回朝日新聞Reライフ文学賞受賞作。あくまで創作であると念押しをされているが、実際した人物について描かれているようなリアリティを感じた。大学の神学部の教授であった八色ヨハネ先生の生涯について。妻と娘を突然亡くしたことで、生きる意味に向き合わざるを得なくなるヨハネ先生。神学者であっても神の教えと自分の辛さとの折り合いをつけるのは難しいことだろう。挿入された「神義論とイエス」の主要部分は著者が同志社大学で開催されたチャペル・アワーで語ったものだとのこと。2023/11/26
harumi
6
素晴らしかった。今年出会えて良かった本のひとつです。自身に不幸な出来事が起こったとき「なぜ私に?何も悪いことはしていないのに」と誰でも思います。この本はその答えを、ある日突然妻と子を失うという不幸に襲われた八色ヨハネ先生を通して教えてくれます。基底にあるのはキリスト教ですが、信者でなくても力をもらえる部分はあると思います。「神義論とイエス」という八色先生の礼拝での講演の記録がこの本の肝となる部分ですが、一回読んだだけではなかなか腑に落ちる所までは至らないので何度も読み返したいと思いました。2023/12/13
Ise Tsuyoshi
3
第2回Reライフ文学賞受賞作。著者のインタビュー記事書きました。 https://www.asahi.com/relife/article/15016836 「なぜ真面目にひたむきに生きている人が人生の半ばで不幸になるのか、その答えは誰にもわかりません。描きたかったのは自分の生き方を変えることによって、その不幸を乗り越えることができたような人物です」2023/10/03
ころりん
2
同志社神学部を舞台に、タイトロールの教授の人生回顧を聞いた「私」が、それを書き伝えてくれる、という体裁の小説。 概ねフィクションであることは「後書き」に書かれている通りなのだけど、クリスチャン2世あるあるや、現代のキリスト教学の同行、「神義論」など、主要なトピックの紹介が散りばめられていて、美味しい中身でもある。 だけど、何よりは、話の筋書きと、八色先生の人となりと、喪失と回復の描写が、こじつけ・押し付けのない、暖かいものであること。 「永遠のいのち、つまり、神のいのち」という言葉がスッと心に灯った。2024/11/25
natukoba
2
友人に勧められた本。友人はこの本の後半の神義論についての考察で今までキリスト教に抱いてきた疑問が氷解したと。 何回か読み直したがそのつど疑問が興味が広がる。旧約の時代から新約の時代をへて、いまだ闘いは続く。そして私は一生この壮大なミステリーを抱えて生きていくのだろうと思った。 2023/12/31