内容説明
筆頭家老の家に生まれ。一生裕福で平和に暮らせるはずだった大石内蔵助の人生は、主君が起こした松の廊下の刃傷事件によって暗転する。不公平な幕府の裁定を前に、籠城だ仇討だといきり立つ藩士たち。内蔵助は彼らをのらりくらりとかわしながら、「藩士どもを殺してたまるか!」とお家再興に向けて奔走する。しかし、下からは突き上げられ、上からはそっぽを向かれる四面楚歌。やってられるか、こんなこと!役割や責任なんて投げ出せたら楽になれるのに…。人間・内蔵助を等身大で描く、新たな忠臣蔵。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
じいじ
85
赤穂四十七士の敵討ち「忠臣蔵」は、ストリーは分かっているのに面白いです。德川五代将軍・綱吉のときの実話なのだが、日本人の判官びいきの気質にもマッチして、現代でもファンが多いようだ。そもそも問題は、松の廊下の刃傷事件の沙汰(判定)が「喧嘩両成敗」でなかったことにあります。「忠臣蔵」は大好きな話なので小説だけでなく、たくさんの映画も観てきましたが、話の骨子は分かっていても面白いです。今作も関西弁まる出しの大石内蔵助に親しみを感じました。2024/01/23
やも
81
【あの日、松の廊下で】が面白かったので、またまた白蔵さんが読みたくなってこちらを。うむ、やっぱり面白い。白蔵さんいいわぁ。単なる事実としてしか語られない歴史にも人の血が通ってる。この歴史になるまで色々とあるよね。本音と建前、どっちもあるよね、人間だもの。やもを。最後だからこそ最高を。侠気心意気に胸がアツくなったよ。※P241、徳川綱吉は5代目将軍じゃないの??2024/12/29
アナーキー靴下
80
討ち入りに消極的といえばビートたけしが演じた内蔵助がそんなだった記憶があるけれど、さすがに昔過ぎてほとんど覚えていない。ともあれ前作の『あの日、松の廊下で』は普遍的な人間の問題、現代ドラマのようだったのに対し、こちらは異色とか斬新と称される時代劇を見るようだった。命を賭けた武士の美徳って、感動的だけど芯から共感できる世界ではないし。つまらなかったのではもちろんなく、むしろ前作は共感し過ぎてつらかったので、こちらは忠臣蔵として凄く楽しめた。でも心情も露わなストーリー運びで読むとやっぱり切腹なんて怖過ぎるよ!2022/07/08
えんちゃん
67
吉良上野介への恨みか、公儀への怒りか。サラリーマン作家・白蔵さんが描く、新解釈・忠臣蔵。わてほんまは討ち入りしたくないねん!内蔵助の本音と建前を泣き笑いで描く。なんとか史実を無視してでも、ワンチャン生きて欲しいと願ったけど。最期は哀しくてやっぱり泣けてしまった。是非『あの日松の廊下で』とセットでどうぞ。バリバリ関西弁の内蔵助がとても面白かった。2024/02/14
タツ フカガワ
64
赤穂藩浅野家取り潰しによる城明け渡しを前に「絶対に誰一人死なせやしない」と密かに念じる大石内蔵助だったが、あるときを境に「この儂になめきった真似しおったご公儀のアホども、絶対に許さへんで」と、吉良家ではなく幕府に対して怒りを向け、最高に美しい討ち入りをすることを決意する。昼行灯の内蔵助が深謀遠慮の人となった瞬間で、ここからの展開がまことに痛快。面白かった。2024/02/10