内容説明
20歳の茉莉は、数万人に一人という不治の病にかかり、余命が10年であることを知る。笑顔でいなければ周りが追いつめられる。何かをはじめても志半ばで諦めなくてはならない。未来に対する諦めから死への恐怖は薄れ、淡々とした日々を過ごしていく。そして、何となくはじめた趣味に情熱を注ぎ、恋はしないと心に決める茉莉だったが……。涙よりせつないラブストーリー。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
馨
563
始めは少々読み進めるのに時間がかかるなぁと思っていたけれど和人が登場してからは一気読みしました。余命が10年とは、一番きらきらしている20代の女性にとっては残酷な告知だと思います。10年もあれば、したいことし尽くして死ねるのでは?なんて浅い考えが浮かぶのは、命に期限が設けられていないからなんだと実感。茉莉を通じて、死の恐怖や、残りの時間が少なくなる辛さや、好きな人の幸せすら願えなくなる苦しみを知って、もっと大切な人を大切にしないといけないし、感謝や愛情はストレートに、出し惜しんではいけないなと思いました。2019/04/03
カメ吉
504
余命10年という何とも分かりづらい時間に感じましたが読んでいて辛かったです。茉莉が過ごした時間が結局良かったのか?それとも辛いものだったのか?途中波がありましたがクライマックスはさすがに引き込まれました。「死」と向き合う事をいつかは考える時がくればまた再読したい作品かな。色々と考えさせられた作品。2017/10/03
青乃108号
421
何でこういう余命系の本に弱いんだろう。それはきっとそろそろ俺にもその時が来るからか。あと10年生きられるかどうかもわからない。突然その時を迎えるよりも、余命何年、ってわかった上で準備を整えて逝きたいな、とは思った。その他の感想は特にありません。2022/10/22
三代目 びあだいまおう
396
大雨の中で懸命に鳴いている蝉がいた。限られた命の時間をムダにしたくないのだろう。本作は弱冠20歳の女性が遺伝性の難病で余命10年を宣告され、尽きる命のタイムリミットまでの【生きる】を描いた作品。虚飾も誇張もなくただ純粋に生きた余命10年。ラスト約50頁の感涙!どんな有名小説家だって紡げないリアルと感動に満ちていた。涙、落ちる涙が止まらない。命を懸け捧げた思いがもたらした顛末、そして奇跡!きっと天国で嬉しくて泣いてるだろうな!選択は間違ってなかったと!私はしっかりと生きたのだと。ただただ、ありがとう‼️🙇2020/08/17
ウッディ
332
難病で余命10年と宣告された20歳の茉莉。思い通りにならない身体と何でもできる友人への嫉妬心を持て余し、穏やかに生きようとする彼女は、同窓会で和人と出会う。一見、難病物のラノベ風展開だが、この小説を書き終えて早世した作者の死に対する真実の言葉が溢れています。「過去は変えられない。けど、未来さえも変えられない。」誰かを好きになると生に執着してしまうが、愛する喜びや輝きを知り、葛藤する茉莉の苦しさは、経験しなければ出てこない想いであり、作者が命を削って、この世に残した作品だと思えました。面白かったです。 2019/04/26