感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
syaori
30
視学官への出世を目指す地方都市の教師ペレドーノフの物語。残念ながらペレドーノフは鈍物で自意識過剰で鼻持ちならない人物として描かれるので、彼が思うように出世できないために徐々に精神のバランスを崩し奇矯な行動をとるようになっていく様は、憐れというよりはグロテスクで滑稽にさえ感じられます。そのなかで展開される、サーシャとリュドミーラとの噎せ返るほどの香水の香りに満ちたロマンスは色鮮やかで、密告におびえ幻覚の虜になって破滅するペレドーノフの物語を美しく彩っていて、その取り合わせが不思議な味わいとなっていました。2016/06/21
きりぱい
11
小悪魔がもう、いわゆるその小悪魔じゃなかった。むしろ主人公が悪魔的。同棲相手ワルワーラのあるかなきかのツテ頼みで出世の根回しに走り、こんなにやっても出世ができないのは、誰かが俺の邪魔をしているからだ、と疑心暗鬼の妄想にとらわれてどんどん醜悪な人間になってゆくペレドーノフ。革命前夜の密告に脅える社会への批判がそこにあるのだけど、ニェダトィコムカなるものを見、狂気が生じた末・・。それにしても、中盤を過ぎてもまだ登場人物ページをちょくちょく参照しないとわかりにくいなんて、読み心地まで悪魔的。2012/09/03
黒豆
3
視学官のポストを得ることができない苛立ちから、妄想の世界にはまりこんで破滅する教師ペレドーノフが描かれる。ペレドーノフ含め醜悪な男性はたくさん登場するけれど、裏で糸を引く女性達がより悪魔的。特に、美少年をたぶらかすルチロフ家のリュドミーラ。彼らがアイリスやシクラメンの香水を振りかけ合いながら戯れる場面が官能的で、ロシア文学の古典の中にこんな作品があることに驚いた。(寡読なので、他にもあるのかもしれない)日本の香水や着物も出てくることが嬉しい。2015/01/03
ヴィオラ
1
こういう行動やセリフには、こういうリアクションが返ってくるだろうな…という予測が、ことごとく裏切られて、なんだか落ち着かない読書(^_^;) 悪意を通り越して狂気を孕んでいく主人公だけじゃなく、出てくるキャラは皆、どこか一本ネジが抜けてる感じ(^_^;)色々疲れた…。2011/09/17
マリンカ
0
表紙美しい。 主人公がどんどん精神的におかしくなっていく話。 登場人物が大体人間の汚い部分が剥き出しになったような嫌な感じ。 若干ドストエフスキーの二重人格と通ずるものがある。 2016/03/30