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出版社内容情報
生と死の闘争をテーマとする作品。解説は、作品の本質を突いた論考。音楽表現の深化を印象的なモティーフの譜例をまじえて紹介。
シュトラウスはなぜ、生と死の闘争をモティーフとする作品を生涯書き続けたのか。筆者は解説冒頭、これまであまり注目されることのなかった、19世紀後半以降のドイツ新興ブルジョワ層が培った教養主義の影響について指摘する。本作の題材選びにおけるショーペンハウアーやワーグナーの影響、そして、ただ「死」を描くだけでは飽き足らず、「浄化」という理念を対置させる作曲家の個性についても論じる。
筆者はさらに、本作が大病の体験に着想を得た作品である、という通説は根拠がないと否定し、アレクサンダー・リッターの冒頭詩も後付けであって、両者の仲は作曲後徐々に険悪となった、と指摘する。
解説は、筆者ならではの作品の本質を突いた論考で、スコアを読みながら聴いたり演奏したりする楽しみを倍化させる。単一楽章ではあるが、大きく4つに分けられる部分をそれぞれ、序奏/圧縮された展開部を持つ提示部/再現部/コーダ、と捉え、作曲家が本作をソナタ形式に擬して書いた、とする。「病人の動機」「小康状態」「少年時代の思い出」「生への執着」「愛の動機」などの印象深いモティーフを譜例をまじえて紹介し、それらが上記の各部分でどのように展開され、音楽表現を深めているかを論じる。
提示部の最後に登場する「浄化」のモティーフと、その冒頭4音列(ソ-ド-レ-ミ〈階名〉)の持つ特別な意味合いを論じた部分は、本解説の白眉と言えよう。
【著者紹介】
1973年生。一橋大学大学院言語社会研究科・博士後期課程修了。博士(学術)。著書に『リヒャルト・シュトラウス 「自画像」としてのオペラ──《無口な女》の成立史と音楽』(アルテスパブリッシング、2009年)、訳書にベルリオーズ、シュトラウス『管弦楽法』(音楽之友社、2006年)など。『レコード芸術』誌などへの寄稿のほか、各種曲目解説などへの寄稿・翻訳多数。本年4月より青山学院大学文学部比較芸術学科准教授に就任。