内容説明
音律とは、音の基準である。この基準は、古代より、時代の流れや民族の独自性によってさまざまに変化してきた。音律が宇宙論に関係したり、国家を支える尺度になっていた時代もある。現代では、ピアノに適用された十二平均律がその基準となっているが、その音律が生み出す規格化された響きが、われわれの自由な耳の感性を束縛している。音律の変遷を古代ギリシャから古代中国、アラブ、西欧までたどり、最後に現代の作曲家や著者自身の、純正調による、耳の感性を取り戻すための新しい試みを紹介する。
目次
第1章 古代ギリシャの音律
第2章 古代中国の音律
第3章 アラブの音律
第4章 西欧の音律
第5章 現代の音律
第6章 あらたな音律の実践
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
内島菫
5
人にとって一番特別な音は、やはり人の声だと思う。ハリー・パーチが自分の声を基準にして独自の音律を体系化したということを知り、そういうことやってもいいんだ、と驚くと同時にやっぱりそうだよなとも思える。本来は楽器も独自の声である音律を持っていて、各々の楽器に合わせた調律を行うべきところ、現在では平均律が支配的であるという。この平均律で調律された箏を著者が純正調に調律しなおすと、箏の胴体が自然に鳴り出したという。私はクラシックをよく聴くが音楽が好きというより音が好きなので、音の響きに耳が喜ぶ音楽が増えてほしい。2015/03/20