内容説明
哲学者ルートヴィヒ・ヴィトゲンシュタインの〈狂った〉甥パウルの姿を追いながら、死・狂気・病気・破滅をテーマに人間実存の暗黒面を正面から見据える。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
harass
53
哲学者ヴィトゲンシュタインの甥のパウルを友人だった著者が語る。『消去』で駆使される一人称のエッセイのような執拗な語りはここでも健在だった。ウィーンの文化史でもあるが単なる思い出ではなく、著者の思想になってしまう。世界的な有名人になった哲学者と違い、一冊も本を書かなかったが天才であったパウルは、狂ってしまったという。哲学者についての言及は少ないが、一族にとっては恥のように思われていたらしい。同じく反逆者だったパウルは擁護していたそうだ。200ページもない短い小説で著者の入門にふさわしい。文庫化を求む。2016/10/27
かんやん
20
文句たらたらの気難し屋が苦手でないという人はいないだろう。ましてや、延々と続く愚痴や悪口に付き合うのはやり切れない。ところが、である。これが芸にまで高められると、持ち味になり、文学になり、笑いを誘う。曰く、田舎が嫌い、自然が嫌い、根っからの都会っ子であるがそこにも定住できない。文学賞にまつわる恨みつらみ、自分の芝居を台無しにした役者達への罵詈雑言。ハイライトは外国の新聞を求めてあちこち観光地をドライブするところ。爆笑間違いなしだ。そう、唯一の友人の死を悼みながら、語られるのはほとんど自分の嫌悪ばかり。2018/02/23
ふるい
9
癖になりそうな毒のある文章が良い。古き佳きノーブルな人びとの住むウィーンいいな…。読み終えてなんともいえない感傷に浸っている。短いがかなりの傑作だと思うので復刊希望。いつか『消去』にも挑戦したい。2018/04/03
tomo*tin
3
彼らなりの方法で彼らなりの「真実」を見極めようとしたのだと思う。毒舌に笑い憎悪に心が揺らいだ。そしてウィーンの懐の深さに脱帽。とても面白かったです。私はこういうの大好き。2008/12/13
暴力と破滅の運び手
2
パウル・ヴィトゲンシュタインについての覚書と言いながら5割くらいウィーンとオーストリア文学界に対する悪口という恐ろしい代物で、それがめちゃくちゃ面白い カフェ通い病のくだりとか文学賞授与とベルク劇場の悪口とかほんとどうしようもないんだけど笑える 解説を読んで「なんでこんなベルンハルトに馬鹿にされそうなこと書いちゃうの?」と思った2019/08/23
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