出版社内容情報
2015~21年にかけて『音楽の友』誌で連載されたピアニスト・舘野泉のエッセイ、「80歳の屋根裏部屋」と「ハイクポホヤの光りと風」をまとめた一冊。書籍化にあたり、連載後の21年10月~23年4月の間の出来事についても大幅に加筆を加えた。60年を超える演奏生活の中で舘野が魅了された作曲家やその作品――ムソルグスキー、グラナドス、ハチャトゥリアン、シベリウス、矢代秋雄、三善晃、間宮芳夫、吉松隆――、そしてのべ数千回のコンサートで巡った世界各地の場所――アイスランド、フランス、ロシア、アルゼンチン、インド、ラオス――など、このほかに家族など大切な人々についても綴っている。
「ハイクポホヤ」とは、舘野の別荘があるフィンランドの湖畔の一角。そこに降り注ぐ光や吹き抜ける風のように、常に音楽と共に移ろいゆく人生の機微を独自の感性でとらえた文章は、作品解説でも自伝でもない、唯一無二の語りである。
内容説明
ヘルシンキから北へ230キロ―別荘のあるハイクポホヤに降り注ぐ光や吹き抜ける風のように舘野の心を掴む音楽、人、場所にまつわるエッセイ集。
目次
第1部 共に歩んだ作曲家(30年ぶりのモーツァルトを弾く;復帰リサイタルで弾いたバッハ=ブラームス“シャコンヌ”;シベリウスにまつわる思い出;ポスト・シベリウス、メラルティンとマデトヤ;フィンランドの独立記念日に聴いたレイヴィスカ;親友、ノルドグレン;星の響きを音にしたシサスク;グリンカ=バラキレフの“ひばり”―性分に合うレパートリー;自分の世界を広げてくれた作曲家ムソルグスキー、グラナドス、ファリャ;草原を疾駆するハチャトゥリアン!;高校時代に手に入れたヴァンサン・ダンディの楽譜;心惹かれるセヴラックの音楽;巻きリールに残されたショーソンの演奏;多彩なイメージを音楽にするパブロ・エスカンデ;アイスランドの作曲家、マグヌッソン;〓田三郎作品を通して想う;池内友次郎と藝大での授業;気取らず率直な中田喜直;純粋で美しい精神の人、三善晃;矢代秋雄の“協奏曲”と“ソナタ”;足の裏で大地を掴み取る間宮芳生の音楽;八村義夫―ぼそぼそと狂気のごとく狂おしく;豊増門下の三羽烏―小澤征爾、末吉保雄、舘野泉;心友、末吉保雄;独自の魅力を秘めた吉松隆作品;成熟と飛躍を遂げる平野一郎;谷川賢作と見続けるジャズの世界;湧き上がる想いを掬う、coba;風を感じる梶谷修作品;躍動と沈黙が響き合う、久保禎作品;光永浩一郎の“サムライ”と出会って;林光の“花の図鑑・前奏曲集”;さまざまな左手ピアノ作品)
第2部 旅は続く(ハイクポホヤの別荘;両親とのエピソード;海辺の母からのメッセージ;疎開の記憶とコキア;かつて演劇に出演したこと;息子ヤンネとヴァイオリン;シベリウスのピアノ録音;フィンランドのクリスマス;ムーミン作家トーベ・ヤンソン;ソ連演奏旅行;熱気に包まれたインド、密林が覆うラオス;ミャンマーでのコンサート;外交官で友であるコポネンと巡ったバリ島、ルーマニア、サラエボ;もう一度行ってみたい南米の国々;プラハにある2つのホール;琉球音楽と神々の気配;アイノラでのリサイタル―秋篠宮両殿下をお迎えして;ドイツの教会と南仏の酒蔵;ななつ星in九州―肥前、豊後の旅;長野でのスダーンとの特別な協演)
著者等紹介
舘野泉[タテノイズミ]
ピアニスト。1936年東京生まれ。1960年東京藝術大学を首席卒業。1981年以降、フィンランド政府の終身芸術家給与を受けて演奏生活に専念する。領域に捉われず、分野にこだわらず、常に新鮮な視点で演奏芸術の可能性を広げ、不動の地位を築いた。これまで北米、南米、オーストラリア、ロシア、ドイツ、フランス、北欧諸国を含むヨーロッパ全域、中国、韓国、フィリピン、インドネシアなどアジア全域、中東でも演奏会を行う。これまでにリリースされたLP/CDは130枚におよぶ。ピュアで透明な旋律を紡ぎだす、この孤高の鍵盤詩人は、2002年に脳溢血で倒れ右半身不随となるも、しなやかにその運命を受けとめ、「左手のピアニスト」として活動を再開。尽きることのない情熱を、一層音楽の探求に傾け、独自のジャンルを切り開いた。“舘野泉の左手”のために捧げられた作品は、10ヶ国の作曲家により、100曲を超える。2012年以降は海外公演も再開し、パリやウィーン、ベルリンにおいても委嘱作品を含むプログラムでリサイタルを行い、満場の喝采で讃えられた。2023年は数え年で88歳を迎え、「米寿記念演奏会」全国ツアーを行う。もはや「左手」のことわりなど必要ない、身体を超える境地に至った「真の巨匠」の風格は、揺るぎない信念とひたむきな姿がもたらす、最大の魅力である(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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