出版社内容情報
装飾音やカデンツァ等モーツァルト様式の詳細な研究書。ピアノ奏者はもちろんモーツァルトを演奏する全ての人達の「バイブル」。
ウィーンの名ピアニストパウル・バドゥーラ=スコダと、その妻で音楽学者として名高いエファ・バドゥーラ=スコダによる大著『モーツァルト 演奏法と解釈』(原著は1957年、日本語版は1963年刊行)の新版。旧著の出版から50年以上が経ち、資料状況の変化やモーツァルトの生涯と創作等の再考証によって得られた新しい情報をもとに、大幅に加筆校訂が施された。良いモーツァルト演奏のためには、モーツァルトの様式―デュナーミク、テンポ、アーティキュレーション、装飾音、カデンツァ等―を知ることが欠かせない。本書では長年の研究によって得られた知見が惜しみなく語られる。また、参考音源で耳でも確かめることが可能。ピアノ奏者はもちろん、モーツァルトを演奏するすべての人にとってバイブルとなる一冊。
第1章 モーツァルトの響きの世界
・モーツァルトの時代の鍵盤楽器
・あらゆる種類の鍵盤楽器に習熟していたモーツァルト
・モーツァルトのアントン・ヴァルター製フォルテピアノ
・モーツァルトのピアノでダンパーを上げるために用いられる膝レバー
・ペダル効果とペダルの使い方
・モーツァルトのフォルテピアノ・ペダル(ペダルフリューゲル)
・モーツァルトのフォルテピアノの音域
・ピアノの構造に関して一言
第2章 デュナーミク(強弱)
・強弱記号に関する18世紀の基本的慣習
・モーツァルトのピアノ作品における強弱記号
・sotto voceとdolceの指示
・静的記号と動的記号
・クレシェンドとデクレシェンド
・モーツァルトのアクセント記号
・強弱記号の補足
・エコー症候群
第3章 テンポとリズムの問題
・テンポの問題
・きわめて重要なテンポ記号のリスト
・アッラ・ブレーヴェ
・「拍子を守って」演奏すること
・アゴーギグ
・ルバート
・リズムの記譜の特性
・三連符の形成
・ヘミオラ
第4章 アーティキュレーション
・レガート
・レガートスラーとアーティキュレーションスラー
・混合アーティキュレーション
・ポルタート
・スタッカート
・記号のついていないパッセージ
第5章 装飾音
・アッポッジャトゥーラ
・アルペッジョ
・ターン
・トリル
・プラルトリラー
第6章 即興的装飾
・装飾する箇所についての古い規則
・必要な音の付加
・モーツァルトによる各種の装飾モデル
・趣味の問題としての音の付加
・様式になじまない音の付加
第7章 カデンツァとアインガング
・カデンツァは即興なのか、それとも事前に作曲されたものなのか
・カデンツァと自由な即興における構造上の差異
・モーツァルトの協奏曲のカデンツァを作曲する
・アインガングとその他のフェルマータ上の装飾
・フェルマータ装飾の適切な場所
・フェルマータ装飾が疑われる箇所およびアインガングを演奏すべきではない箇所
・フェルマータ記号のさまざまな意味
第8章 表現と趣味
・強弱のニュアンスを活用した表現
・アーティキュレーションを使った表現
・リズムの表現力
・和声の表現力
・表現力を支える適切な伴奏
・喜劇的な雰囲気と悲劇的な雰囲気の表現
・笑顔を絶やさずに!
・くり返しは必ずしなくてはならないのか?
第9章 最良のテクストを求めて
・新モーツァルト全集
・その他の推奨されるエディション
・ピアノソナタにおけるテクスト問題
・ピアノ協奏曲におけるテクスト問題
・『新モーツァルト全集』のあとに来るのは?
・《ピアノ協奏曲変ホ長調K.271》の最新版(ブライトコプフ&ヘルテル社)
・ウィーン原典版の新訂版
・楽譜の綴じ方について
第10章 オーケストラとの協奏
・ピアノ奏者は、ピアノ協奏曲をどのように演奏すべきか
・オーケストラの規模とリピエーノ・パート
・コンティヌオの演奏
・オーケストラとともに演奏する協奏曲楽章の最後の和音
第11章 ピアノ作品における技術的問題
・フィンガーアクション
・音階とアルペッジョ
・トリル
・オクターヴ
・ダンパー・リフティング・ペダル(膝レバー)を使う際の技術的問題
第12章 いくつかのピアノ作品の演奏解釈
・《ピアノ協奏曲ニ短調K.466》
・《ピアノ協奏曲イ長調K.488》
・《ピアノ協奏曲ハ短調K.491》
・《ピアノソナタイ短調K.310》
・《ピアノソナタイ長調K.331》
付録
○付録1 パミーナのト短調アリアに関して伝えられるモーツァルトのテンポ
○付録2 現在入手可能なモーツァルト作品の推奨楽譜
○付録3 バッソ・コンティヌオの実施例
【著者紹介】
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内容説明
モーツァルトを演奏するすべての人たちへ。ウィーンの伝統を受け継ぐ巨匠バドゥーラ=スコダ夫妻による、装飾音や強弱、カデンツァなどモーツァルト様式の実践的なアドバイスが満載!長年の研究と体験により満を持して全面改訂、待望の新版。
目次
モーツァルトの響きの世界
デュナーミク(強弱)
テンポとリズムの問題
アーティキュレーション
装飾音
即興的装飾
カデンツァとアインガング
「表現と趣味」
最良のテクストを求めて
オーケストラとの共奏
ピアノ作品における技術的問題
いくつかのピアノ作品の演奏解釈
著者等紹介
バドゥーラ=スコダ,エファ[バドゥーラスコダ,エファ] [Badura‐Skoda,Eva]
ウィスコンシン大学マディソン校の教授として、またザルツブルク・モーツァルテウムやカナダ(クィーンズ大学、マギル大学)、アメリカ(ボストン大学)、ヨーロッパ(ゲッティンゲン大学)でも客員教授として教鞭を執るとともに、世界各地で数々の講演を行ってきた。モーツァルトのハ短調協奏曲に関する著作、ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン、シューベルトの作品研究や原典版楽譜など、多くの研究成果を発表してきた。また、フォルテピアノの歴史に関する3本のドキュメンタリー映画の脚本執筆および監督を担当
バドゥーラ=スコダ,パウル[バドゥーラスコダ,パウル] [Badura‐Skoda,Paul]
1927年ウィーンに生まれる。1945年にウィーン音楽学校に入学、そのわずか2年後にオーストリア音楽コンクールで優勝した。1949年にヴィルヘルム・フルトヴェングラーとヘルベルト・フォン・カラヤンがコンサートのソリストとして招いたところ、世界的な大ピアニストとなった。エトヴィン・フィッシャーのアシスタントも務め、フィッシャーの死後、ウィーンやザルツブルク、エディンバラ、シエナでマスタークラスの伝統を引き継いだ。数多くの主要な国際ピアノコンクールの審査員を務めつつ、大きな情熱を若い音楽家の育成にも捧げている
今井顕[イマイアキラ]
1954年、東京に生まれる。若くして才能をパウル・バドゥーラ=スコダに認められ、私立武蔵高校を中退してウィーンへ渡欧、氏の薫陶のもとで研鑽を積んだ。早くも19歳でウィーン国立音楽・舞台芸術大学を最優秀の成績にて卒業、数々の国際コンクールに優勝・入賞し、コンサートピアニストとして国際的な活動を開始する。恩師スコダにはフォルテピアノも含めた演奏技法のみならず、古典派の書法に関する実践的な知見や原典資料の評価と原典版楽譜の編纂技術も教授され、東独ペータース社のショパン原典版全集の『即興曲集』やオイレンブルク社刊『ベートーヴェンピアノ協奏曲第5番「皇帝」』の原典版スコアその他の編纂を担当した
堀朋平[ホリトモヘイ]
神奈川県生まれ。武蔵野音楽大学・国立音楽大学講師。日本学術振興会特別研究員PDを経て2013年、東京大学大学院人文社会系研究科博士後期課程修了。日本シェリング協会第10回研究奨励賞受賞
西田紘子[ニシダヒロコ]
千葉県生まれ。九州大学大学院芸術工学研究院助教。ロータリー財団奨学金を得て2005年より2年間、ウィーン国立音楽大学博士課程で音楽理論等を学ぶ。2009年、東京藝術大学大学院音楽研究科博士後期課程修了(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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