出版社内容情報
2016年夏に逝去したヴァイオリニスト若林暢によるジュリアード音楽院博士論文。「悪魔」を表した音楽について独自の分析で紹介。
豊かな表現と知的さに溢れ、自身の音楽的欲求を余すところなく実現できる数少ないヴァイオリニストで、2016年6月に惜しまれつつ亡くなった若林暢によるジュリアード音楽院博士論文。クラシック音楽史上「悪魔」を表現した音楽が多く存在するが、それらの楽曲分析を通して悪魔の姿がどのように描かれているのかを浮き彫りにしていく。作品の背景や手法・様式を分析することで、作曲家が悪魔を描いたであろうという見地を明らかにし、演奏家をはじめ多くの人にとってのより深い理解に役立てばという想いの詰まった1冊である。それぞれの曲のどのような場面でどのフレーズが悪魔のモチーフとして使われているか、豊富な譜例とともに独自の解釈を提示、また旋律だけでなく和声的な観点からの分析も多く、自論を裏付ける材料が満載である。
? はじめに
? 1800年以前の音楽における悪魔について
1.概要
2.バッハ/カンタータ第19番より冒頭の合唱の部分
? 19世紀初頭の名曲
1.シューベルト/《魔王》
2.ウェーバー/《魔弾の射手》より「狼谷の場」冒頭
? 音楽の中のメフィストフェレス
1.メフィストフェレスの歴史
2.ゲーテ『ファウスト』に基づく名曲
a.リスト/《ファウスト交響曲》より「メフィストフェレス」楽章
b.ゲーテ『ファウスト』に基づく他の名曲について
? 「macabre」(恐怖)のライトモチーフとしての「ディエス・イレ」
? 悪魔の楽器としてのヴァイオリン
1.パガニーニ
2.悪魔の楽器としてのヴァイオリンをイメージした音楽作品
a.タルティーニ/《悪魔のトリル》
b.リスト/《メフィストフェレス》
c.サン=サーンス/《死の舞踏》
d.マーラー/交響曲第4番第2楽章
e.ストラヴィンスキー/《兵士の物語》
? 結論
? 参考文献
若林 暢[ワカバヤシ ノブ]
ヴァイオリニスト。東京藝術大学、同大学院を経て、ジュリアード音楽院を卒業、博士号を取得。カーネギーホールでのデビュー・リサイタルは、ニューヨークタイムズでも高い評価を受けて、世界各地で演奏活動を行う。ニューヨーク国際芸術家コンクール、ヴィエニャフスキ国際コンクール、モントリオール国際コンクールなど優勝入賞多数。58歳没。
久野 理恵子[クノ リエコ]
通訳・翻訳家。上智大学外国語学部ドイツ語学科を卒業後、音楽出版社勤務を経て、フリーの通訳、翻訳者となり、現在に至る。来日音楽家のインタヴュー、マスタークラス等の通訳、およびライナーノーツをはじめとする翻訳多数。
目次
第1章 音楽の中の悪魔―1800年以前(概説;J.S.バッハ:カンタータ第19番冒頭の合唱)
第2章 19世紀初頭の名曲(シューベルト:『魔王』;ウェーバー:『魔弾の射手』より「狼谷の場」冒頭)
第3章 音楽の中のメフィストフェレス(メフィストフェレスの歴史;リスト:『ファウスト交響曲』の「メフィストフェレス」の楽章 ほか)
第4章 死のライトモティーフ「ディエス・イレ」(ベルリオーズ:『幻想交響曲』;「ディエス・イレ」が用いられた他の名曲 ほか)
第5章 悪魔の楽器ヴァイオリン(概説;パガニーニ ほか)
著者等紹介
若林暢[ワカバヤシノブ]
1957‐2016。東京藝術大学附属高校、東京藝術大学、同大学院を経て、ジュリアード音楽院を卒業。1995年、本論文で博士号を取得。1986年、ニューヨーク国際芸術家コンクール優勝、ヴィニャフスキコンクール2位、最優秀音楽解釈賞、ヘンリク・シェリング賞、ワンダ・ウィルコミルスカ賞、ポズナン市長賞も併せて受賞。その他モントリオール国際コンクールなど入賞多数。1987年カーネギーホールでのデビュー・リサイタルは、ニューヨーク・タイムズ紙でも高い評価を受け、アメリカ、ドイツ、イタリア、スペイン、ポーランド、スイス、オーストリア、中国、韓国など世界各地でソロ・リサイタル、また各地のオーケストラとの共演などソリストとして演奏活動を行う
久野理恵子[クノリエコ]
上智大学外国語学部ドイツ語学科卒業後、音楽出版社勤務を経てフリーの通訳・翻訳者となる。来日芸術家・作家のインタビュー、記者会見、TVおよびラジオ番組、マスタークラス等の通訳を務め、ミュージカル等の台本翻訳、字幕監修、ライナーノーツ、書籍等の翻訳も多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
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