内容説明
文学のモデルとしての音楽、という主題をもつ本書は、音楽をめぐってプルーストの作品全体を貫いているさまざまなテーマを解きほぐすことによって、『失われた時を求めて』へのきわめて明解で洞察力に富んだ入門書になっている。
目次
序論 「小楽節」をこえて
第1部 プルーストとワーグナー―作品のモデルとしての『パルジファル』
第2部 文学のモデルとしての音楽(最初の演奏とヴェルデュラン家でのアンダンテ;ヴェルデュラン家におけるその他のピアノ演奏 ほか)
第3部 ヴァントゥイユからショーペンハウアーへ
結論 本質の探究と起源の否定
著者等紹介
ナティエ,ジャン・ジャック[Nattiez,Jean‐Jacques]
モントリオール大学音楽学部教授。ヴァントゥイユの〈ソナタ〉と〈七重奏曲〉についてのテクストを検討し、小説の進行において音楽が果たす役割を明らかにしている
斉木真一[サイキシンイチ]
1953年生まれ。中央大学文学部教授。専攻はプルーストを中心とするフランス近・現代小説
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感想・レビュー
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たーぼー
51
プルーストから与えられた大きな試練、文学と音楽の幸福な結びつきを追求することは、螺旋階段を永遠に昇降するような行為にも思えるが、ナティエは見事に簡明に凝縮してみせた。『失われたー』自体には、モチーフとなった作曲家、作品についてプルーストから幾つかの明白な言及もある。そこに、ナティエはより解釈の範疇を広げ、果ては形而上学観点からショーペンハウアーをも見出す。このような多角的な分析が、後世の研究者からなされることをプルーストは想定していたのだろうか。いずれにせよ、彼の美学の諸相がそうさせずにはいられないのだ。2017/02/11
たかさん
3
『失われた時を求めて』という果てしなく思える大海へ出航するとき、頼りになる音楽という記号の海図となる。かつて早々と挫折してしまった膨大な作品を読むに当たって大いなる骨格を与えてもらった。プルーストとワーグナーに関心のない人にとっては愚かな書物かもしれないが、関心のある人にとっては力となってくれる。 2017/06/14
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