内容説明
「九・一一」以降、身近な脅威として感じられるようになった「テロ」とはそもそも何なのか。ハイテク兵器による直接的な破壊以上に恐怖を感じさせるのは、放射能や細菌・化学物質などの「大気」中への放出で、我々を取り巻く「環境」自体が究極の兵器に変身する可能性だ。「環境」兵器の出現によって、我々の社会は不安の「空気」で覆い尽くされつつある。ドイツのポストモダンの論客スローターダイクが、第一次大戦での毒ガス使用にまで遡りながら、「空(気の)震(動)」としての「テロ」の本質を解明する。
目次
1 ガス戦争:あるいは大気=呼吸テロリズムのモデル
2 上昇していく解明度
3 エア/コンディション
展望
著者等紹介
仲正昌樹[ナカマサマサキ]
金沢大学法学部助教授。専攻は社会思想・比較文学
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感想・レビュー
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ころこ
40
01年にアメリカで炭疽菌事件という毒ガス騒動があり、直前の9.11と並んで戦争からテロの時代へ、リベラル社会への警鐘となっている。毒ガスといえばアウシュヴィッツからの歴史的経緯、なぜ近年になって毒ガスが使われるようになったのかを紐解いている。テロが社会の内部から発生するだけでなく、毒ガスは我々が体内に取り込む空気を利用する。再帰的近代性のリスク社会は何でも可視化してしまうが、かえって新たな対象を敵認定する過剰を潜在させている。コロナは新たに意識するようになった社会の内部にある敵であることは言うまでもない。2025/03/23
みゆき
5
個人対個人の暴力から、個人から環境(個人の身体をとりまく大気)への脅威となるテロへの移行を考察する。2023/09/20