内容説明
近代法の基礎になっていた、自己の利益を最大限に追求しながら、全体の福祉を志向する「一般意志」を共有する「人間=市民」というルソー主義的前提が崩壊しつつある。「法」によって制御されてきた「公/私」の境界線の揺らぎの中で、カント的な「法=権利」主体の“自律性”はどう変貌していくのか。アーレント、リオタール、コーネルによる『判断力批判』読解を手がかりに、ポスト・カント主義的な「自由」の可能性を探求する。
目次
第1章 法の内と外(「われら」の「法」;「われら」の「暴力」 ほか)
第2章 カント政治哲学における“法”と“共同体”―想像力による“自由な連帯”の可能性をめぐって(カント的リベラリズムの可能性;『判断力批判』における「共通感覚」論の射程 ほか)
第3章 「公共性」と「共通感覚」―ハンナ・アーレントの「政治=演劇」モデルをめぐって(「共通世界」の崩壊と「公共性」;「公共性」を維持する物語=歴史 ほか)
第4章 カント的「自由」概念の脱構築―リベラリズムの「限界」とドゥルシラ・コーネルの法哲学をめぐって(「人格」と「自由」;「父の法」と「イマジナリーな領域」への権利 ほか)
著者等紹介
仲正昌樹[ナカマサマサキ]
1963年広島県生まれ。1989年東京大学教育学部教育学科卒業。1996年東京大学総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程修了(学術博士)。現、金沢大学法学部助教授。専攻は社会思想・比較文学
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。