内容説明
「九・一一」を契機に、アメリカは「無限の正義」の名の下に、「アイデンティティー・ポリティックス」への危険な道を歩み始めている。アメリカ主導のグローバリズムを批判してきたアメリカの左派知識人たちは新しい情勢にどう対応しようとしているのか。アメリカ批判理論の第一線に立つナンシー・フレイザー/エリ・ザレツキー夫妻が、ポスト「九・一一」の正義論の可能性を模索する。
目次
第1章 九・一一後の社会的正義、再配分、そして参加
第2章 トラウマと脱物象化:九・一一と存在論的安全の問題
第3章 グローバリゼーションとジェンダー
第4章 グローバリゼーションと「九・一一」
第5章 再配分か承認か?―現代社会における階級とステータスについて
著者等紹介
フレイザー,ナンシー[フレイザー,ナンシー][Fraser,Nancy]
1947年生まれ。ニュー・スクール・フォー・ソーシャル・リサーチ(新社会研究所)教授。政治学・フェミニズム研究
ザレツキー,エリ[ザレツキー,エリ][Zaretsky,Eli]
ニュー・スクール・フォー・ソーシャル・リサーチ(新社会研究所)教授。歴史学・精神分析
仲正昌樹[ナカマサマサキ]
1989年東京大学教育学部教育学科卒業。1996年東京大学総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程修了(学術博士)。金沢大学法学部助教授。専攻は社会思想・比較文学
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感想・レビュー
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Ecriture
2
フレイザーは再分配と承認の二つのアプローチを組み合わせて正義、公正を目指す。システム=アリーナ内で同等の参与資格の達成を。アイデンティティポリティクスは否定。ステータスという尺度を推奨。ザレツキーは脱物象化によりアメリカ、資本主義、対象世界内部の分裂を示す。リプレイは反復によるトラウマ克服。愛国心を肯定。いつも思うけどフレイザーは「対バトラー◎」がついてるな(笑)ザレツキーの具体性もいいなぁ。彼女の後どうすべきかはジジェクに接続することにして。2009/07/06
かめすけ
0
ナンシー・フレイザーの著書を何か読みたいと思いまずは地元の図書館で手に入るものをと思いこちらを。結果的に、『再配分か承認か?』で論ぜられるものの大まかな枠組みを捉えられてよかった。政治における「正義」が、再配分としての語りか、承認としての語りかという2つの潮流に分断してしまった。その結果として9・11がある(9・11は承認=アイデンティティをめぐる訴えであった)。フレイザーはその「どちらか」ではなく、再配分と承認のどちらも必要だと説き、その分断をつなげようと試みる。それは「ジェンダー」は二元的な集合体→2023/01/20