内容説明
社会を構成する利害・権力関係が多元化・複雑化し、ネットを介して大量の「情報」が否応なく不特定多数の人たちに共有化されている現代社会においては、近代的な「法」の支配の基盤になってきた「公/私」の境界性が流動化する。ジェンダー、セクシュアリティ、エスニシティ、宗教、そして究極のプライバシーとされる「心の問題」に至るまで、公権力の「私的領域」への政治的干渉の余地が拡大しつつあり、それに伴って、「私的なもの」を保護するための「公共性」という古くて新しいテーマがアクチュアルになっている。現代思想の諸分野の知見を動因して、「公/私」の境界線(ノモス)の意味を再考する。
目次
現代社会における「公共圏」
アーレント『人間の条件』における公共性の条件
権力と公共性―デリダ的公共性について
公共空間は、なぜ、いかなる空間なのか―ハンナ・アーレントにおける公共空間をめぐって
公共空間と技術―新たな革命のキック・オフ
“セックス・ワーク”論と公共性
“レズビアン・アイデンティティ”という契機―その公共空間への介入可能性
“親密圏”と“公共圏”のあいだで―「シルバー世代による子育て」の伝統性と近代性をめぐる一考察
科学技術社会学による広用公共圏論―核エネルギーと遺伝子組み換え作物に関するコミュニケーション批判
人間は物化せねばならない―先端テクノロジー時代の「人間性」
生き延び・供犠・死への権利―ヘーゲル哲学における死を介した個人と共同体の問題
公共空間生成の端緒としての「住まうこと」―千葉・稔台オウム信者転入拒否騒動を素材とした試論的考察
著者等紹介
仲正昌樹[ナカマサマサキ]
金沢大学法学部教授。社会哲学
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