内容説明
独歩の本領は短編小説にあるといってよいだろう。本書では、前著で論究した「源おぢ」「武蔵野」の二編を除き、短編を八つに絞り、考察を試みた。それらの小説には、『欺かざるの記』の時代に練りあげられた独歩固有の問題意識と、さらに民友社で培われた時代への敏感な眼配りが通底している。独歩は、その時々で、何が問題になっているかを的確につかんだ。その把握したものを彼固有の問題意識に引きつけて小説世界を創造しようとしたのである。
目次
忘れえぬ人々
河霧
牛肉と馬鈴薯
春の鳥
二少女
少年の悲哀
鎌倉夫人
竹の木戸
独歩吟
花袋「東京の郊外」と独歩「武蔵野」
近松秋江の独歩評