出版社内容情報
軟弱・売国と批判された戦前の「幣原外交」にみる平和思想。幣原・マッカーサー会談が秘密とされた特殊事情。日本国憲法を誕生させた敗戦直後の時代状況を構造的に把握することにより、幣原が9条発案者であると証明した決定版!
内容説明
幣原はマッカーサーとの“秘密会談”で何を語ったのか?!憲法制定過程の間隙をうめる歴史事実の論証に挑む!
目次
第1章 「幣原外交」の再評価
第2章 幣原喜重郎の戦時生活と敗戦
第3章 アメリカの日本占領政策
第4章 幣原喜重郎内閣の発足
第5章 憲法改正作業の始動
第6章 アメリカ政府とGHQによる憲法改正の促進
第7章 マッカーサーとの「秘密会談」における幣原の憲法九条発案と「秘密合意」
第8章 GHQによる憲法改正草案(日本国憲法草案)作成
第9章 幣原内閣による「憲法改正草案要綱」の発表
第10章 日本国憲法草案の帝国議会における審議と採択
著者等紹介
笠原十九司[カサハラトクシ]
1944年群馬県生まれ。東京教育大学大学院修士課程中退。学術博士(東京大学)。都留文科大学名誉教授。専門は中国近現代史、東アジア近現代史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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壱萬参仟縁
45
衆院選44%有権者の意思が不明、改憲勢力が議席を増やした事実から将来を憂え借り出して読んだ。ルーズベルトは天皇の戦争責任追及の声が、米国では無視できない世論。天皇制を戦後存続か、廃止か。蒋介石は国体問題は、日本の新世代が自分で解決するのが好ましいとした(112頁)。米国の日本占領政策の箇所では、いまだに重要なのは、基本的人権の強化と個人の自由の尊重(119頁)。幣原が首相になりたての頃、改憲は後の問題と考えていた。全国民は生きてゆくために、食うことと住む場所という生活手段確保に必死だったから(163頁)。2021/11/06
樋口佳之
39
戦争放棄と戦力不保持については、一九四五年一二月一日に陸軍省・海軍省が廃止されるまで幣原内閣の閣僚に下村定陸軍大臣・米内光政海軍大臣がいたのであり、陸海それぞれ第一復員省、第二復員省となっても、旧軍組織はまだ残存して隠然たる勢力を維持しており、幣原のように日本人の首相が戦争と軍隊を全面否定する「戦争放棄」「戦力不保持」を憲法改正条項に入れると宣言すれば、それこそ、旧軍関係者や右翼から「国賊」として糾弾され、テロの対象とされる可能性/発案が誰かを全体状況の中で描いていると読みました2020/09/17
Naoya Sugitani
4
問題の多い一冊と言わざるを得ません。まず、近年の政治外交史研究が全く参照されていません。近年の研究では幣原が平和外交を展開したなどと評価している歴史家はいません。また、戦時期の幣原の和平行動への非協力的姿勢や、戦後初期に外務省に提出した「終戦善後策」についても無視しています。佐々木髙雄『戦争放棄条項の成立経緯』の批判を乗り越えられているとは到底言えず、一貫して不都合な事実の無視と先行研究の軽視が目立つ内容となっています。歴史学界ではほとんど無視されていますが、的確な批判がなされることを心より望みます。2020/05/09
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- 日本中世の朝廷・幕府体制