出版社内容情報
敗戦後の住宅不足のなかで、人々はガード下などに仮小屋を建て暮らし始めた。そして形成されたバラック街は、都市で生きる人々が交錯する独特な空間となっていく。都市開発のなかで「不法」とされ消滅へと至る、その全体像に迫る。
内容説明
戦後の住宅難において生成され、都市で生きる人々の軌跡が交錯する独特な空間となったバラック街。都市開発のなか「不法」な存在とされ、多くが消滅へと至る、その全体像に迫る新たな戦後史。
目次
第1章 「不法」なる空間のすがた
第2章 「不法」なる空間の消滅過程
第3章 「バタヤ街」を問いなおす
第4章 河川敷居住への行政対応
第5章 立ち退きをめぐる空間の政治
第6章 河川敷に住まう人々の連帯
第7章 集団移住へ向けた戦略と戦術
著者等紹介
本岡拓哉[モトオカタクヤ]
1979年兵庫県神戸市生まれ。2003年関西大学文学部史学地理学科卒業。2009年大阪市立大学大学院文学研究科地理学専修後期博士課程修了、博士(文学)、専門は人文地理学。同志社大学人文科学研究所助教を経て、立正大学地球環境科学部地理学科特任講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Nobuko Hashimoto
26
受講生が紹介してくれた本。「不法占拠」バラック街の生成と消滅を検証。居住者、生業、消滅の経緯などはそれぞれに違い、多様で流動的な生活が営まれていたのに、ひとくくりで語られ、あるいは「解決されたもの」として忘れられている。しかしそれは、そこで営まれた生活や人生、退去に伴う問題をなかったことにしてしまうのではないか、戦後の開発政策の問題点を隠し、単純に正当化してしまうのではないかという問題提起がされている。詳しくはブログに。https://chekosan.exblog.jp/30399272/2021/01/19
アメヲトコ
7
2019年刊。戦後の日本各地の公園や道路、河川敷などが「不法占拠」されて形成されたバラック街の実像と、それがいかにして消滅していったかの過程を追った一冊。一口に「不法占拠」地区といっても、その内部構成は多層的で、立ち退きのありようも個別移転する場合から、組織的運動によって集団移転する場合までさまざまであったことがよくわかります。「不法占拠」地区は確かに消えたものの、それゆえに問題は不可視化したのではないかとの筆者の指摘は重いです。事例研究は興味深いですが、もう少し都市全体の中での文脈が知りたいところ。2020/12/08
恋愛爆弾
2
ここにはたくさんの数字が記載されている。人数、住居数、世帯数、費用、世帯主の収入、年数、事件の件数……数値化された人間たちの歴史は、詳細であればあるほどその膨大な数たちの中から一つ一つ、確かな声を持つ。これはそう信じられて著された本だ。私もまたそう信じたいと思った。2019/08/17