出版社内容情報
戦時期日本の労働力動員をめぐるイデオロギーと政策、そして民衆の具体的な経験を、膨大な史料から明らかにする。
内容説明
総力戦に向けた労働力動員はどのように展開されたのか。「強制」のみならず「同意」の契機に着目し、動員政策とその背後にあるイデオロギーの特質を明らかにする。そして、そうした動員体制の下での民衆の経験を、日記や体験記、漫画などの史料を駆使して浮き彫りにする。
目次
第1部 労働力動員政策の展開と「産業戦士」(労働力動員の拡大と労資関係の再編;青少年工「不良化」対策―「自由主義」からの解放と「家庭」の動員;国民徴用援護事業の展開とその論理;国民徴用援護事業と民衆の“接点”―大阪府における応徴士相談委員の活動)
第2部 経験としての「産業戦士」(生産漫画の射程―戦時下における加藤悦郎の実践と勤労青年;民衆の徴用経験―日記・記録資料を中心に;生存の危機のなかの「産業戦士」―敗戦前後の労働者統合)
著者等紹介
佐々木啓[ササキケイ]
1978年生まれ。2011年、早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程退学。博士(文学)。現在、茨城大学人文社会科学部准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Mealla0v0
5
戦時期に行われた軍需をはじめとする各工場への労働力動員、徴用。それは自由主義を克服しつつ産業能率を向上させ物量戦に勝利するための統制経済の一環として行われるが、本書は国家による強制性と並んで民衆からの同意の調達という視点で描かれる。「勤労」「産業戦士」といったイデオロギーは、徴用工を徴兵に次ぐ国民的名誉と位置づけ、民衆の自発性や共同性を引き出すものであった。また、徴用による都市の人口流動に伴う混乱を大阪では方面委員が援護した点で戦前からの社会事業との連続性も確認し得る。だが、敗戦に近づくにつれ、2021/09/20