出版社内容情報
コロナ禍は、ケア実践やケア労働の重要性と、それを疎かにしてきた社会のあり方をあらわにした。ケアの概念を手がかりに、家族、コミュニティ、国家、経済、そして世界と地球環境の危機を解明し、ケアに満ちた対案を構想する。
内容説明
コロナ禍は、ケア実践やケア労働の重要性と、それを疎かにしてきた社会のあり方をあらわにした。家族、コミュニティ、国家、経済、そして世界と地球環境の危機を解明し、ケアを中心に据えた対案を構想する。
目次
序章 ケアを顧みないことの支配
第1章 ケアに満ちた政治
第2章 ケアに満ちた親族関係
第3章 ケアに満ちたコミュニティ
第4章 ケアに満ちた国家
第5章 ケアに満ちた経済
第6章 世界へのケア
著者等紹介
岡野八代[オカノヤヨ]
1967年生まれ。同志社大学グローバル・スタディーズ研究科教授。専攻は西洋政治思想史、現代政治理論
冨岡薫[トミオカカオル]
1993年生まれ。慶應義塾大学大学院文学研究科哲学・倫理学専攻後期博士課程。国立研究開発法人国立がん研究センター社会と健康研究センター生命倫理・医事法研究部特任研究員。専攻はケアの倫理と生命倫理・研究倫理
武田宏子[タケダヒロコ]
1968年生まれ。名古屋大学大学院法学研究科教授。専攻は政治社会学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
buuupuuu
11
現代社会では、ケアを必要とする人に与えられず、ケアに従事する人は低い評価しか与えられない。資本主義的な価値観では、自立した強い人間が求められている。しかし実際には人は傷つきやすく、相互に依存している。それを認識し、負担を一部の人達に強いるのではなく、誰もがケアしあえるように支援する社会を作らなくてはならない。そのような「ユニバーサルケア」の観点から、家族、コミュニティ、国家、経済について代替案が提示される。ケアを行う家族的な関係はもっと多様であっていいし、民営化され商品化された共有物は取り戻すべきである。2021/09/05
koke
10
コロナ以降、文壇を席巻したケアというテーマ。ずっと分かるような分からないような気がしていた。ケアが大事…それは、そうだよなと。本書を読んでいる間ももやもやは続いていたが、解説まで読んで少し腑に落ちた。著者らがケアを語る文脈には、実は倫理と社会制度の二面がある。おまけに家族から国家、果ては地球までの階層がある。それらを自由に行き来して語るから、分かるような分からないような話になるわけだ。果たして倫理が先が、社会制度が先が。それは分からないが、懇切丁寧な解説と注だけでも本書には読む価値がある。2022/02/24
Bevel
5
それぞれ俗流の、ケアとマルクス(ないしポストケインジアン)を掛け算したもので、雑なものに雑なものをかけて、雑な見通しを出すという感じにどうしても見えてしまう。運動家が手当たり次第に材料を集めて書いてみたけど、俯瞰できてない、煮詰まっていないみたいな。才能のある人を盛り上げることはできるのかもしれないけど、やる気のない私は冷ややかな気持ちになる。たぶん私に宛てた本ではなかったのだろう。。2022/04/04
優
3
自分自身のケアも難しい状況で他人のケアは難しいというと(p7)や、富裕層が自分の行為能力に疑いをもたず、ケアしてくれることを支配している限り、依存は隠蔽される(p40)は、本当にそう。ここら辺を読んでいて、『99%のためのフェミニズム宣言』と似ている問題意識の本だと思った。レヴィナスやデリダよく見るので、概要であれ議論がまとめられていたのは良かった(p67)。 「無差別のケア」(p72)は再生産労働の不可視化との繋がり、バルネラビリティや障害の社会モデルとかも思い出した。訳者あとがきも良かった。2022/03/18
takao
2
ケアに満ちた社会へ 2023/06/19