出版社内容情報
ナンシー・フレイザーのフェミニズム批判を受けとめ、日本社会のジェンダーとセクシュアリティをめぐる状況を具体的に考察する。
内容説明
ポストフェミニズム化する日本を斬る!対話と論争の覚醒へ。ナンシー・フレイザーの批判を真摯に受けとめ、英米のポストフェミニズム論を読み解き、日本の「ネオリベラル・ジェンダー秩序」を、理論的かつ具体的に批判する。
目次
第1章 ネオリベラリズムとジェンダーの理論的視座
第2章 日本におけるネオリベラル・ジェンダー秩序
第3章 ポストフェミニズムと日本社会―女子力・婚活・男女共同参画
第4章 「女子力」とポストフェミニズム―大学生アンケート調査から
第5章 脱原発女子デモから見る日本社会の(ポスト)フェミニズム―ストリートとアンダーグラウンドの政治
第6章 「慰安婦」問題を覆うネオリベラル・ジェンダー秩序―「愛国女子」とポストフェミニズム
著者等紹介
菊地夏野[キクチナツノ]
名古屋市立大学人間文化研究科准教授。専攻は社会学、ジェンダー/セクシュアリティ研究(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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夜間飛行
132
女性の社会進出を促しながら伝統的役割を強調する…という捻れがなぜ生じたか。世界レベルでは、第二波フェミニズムが新自由主義と新保守主義の間に呑み込まれたらしい。現政権の掲げる女性活躍も、女性を競争させ企業と一体化させる新自由主義の発想だ。そこにポストフェミニズムの表象が拡散し、セクシーさなど身体的資産への自己監視を強めているという。フェミニズムはすでに達成されたもの…アカデミックな強者の論理と見なされ、ビリギャルやAKBなど少女の上昇物語や女子力という言葉に吸収されていった。読めば読むほど難問に突きあたる。2020/03/22
松本直哉
23
日本に齎された外来思想の多くと同じく、フェミニズムもまた、一部の知識人の知的玩弄物でしかなかったのだろうか。性差別はもはや存在しないかのように、代わって女子力やら活躍やら持ち上げるような言説は、差別を依然残したまま、女性を労働力と生殖能力でしかとらえていない。女性誌の見出しを見る限り、いかに愛されるかが今の女性の至上の目的で、女性自身もまた、性的客体とされることをむしろ喜んでさえいるかに見える。フェミニズムをどのような女性も主体的にかかわれるように血肉化して復権させることは可能なのだろうか。2020/02/20
わん子
14
現代女性の生きづらさ、違和感を思想・労働・文化etcから分析解釈。女子力の分析はこんな視点が生まれるのかとびっくりした。インタビューの章では男女平等とか言っても実際は男性に忖度せざるを得ない女性って自分だけじゃないんだな、と思えた。外国の#MeTooやエリート女性の分析もあり高度な内容ながらかなり深く徹底的に分析したのちにわかりやすく噛み砕き伝えることに腐心されたように感じる文章だった。2020/02/05
K.H.
10
うーむ…論そのものは明快で問題の所在がクリアになる。わたしは本書に同意する。けれど同時に、問題の根深さにたじろいでしまう。特に本書前半で論じられるネオリベラリズムによるフェミニズムの逆用や、その特殊日本的な様態については、第2波フェミニズムの時代にも増して、そう仕向けている主体がもはや見通せない。ネオリベ自体がそういうものなのかもしれないけれど。本書が依拠するナンシー・フレイザーなんかも読んで、頭の中にもう少し見取り図を作りたい。それまでは著者のような理論家や活動家にひっそりとエールを送ることにしよう。2022/11/12
Myrmidon
6
社会全体に反フェミニズム的な空気が広がる状況を指す「ポストフェミニズム」を鍵として、日本社会におけるフェミニズムの現状を解説する。ただしフェミニズムに一定の価値を認め「役割を終えた」とする欧米と、フェミニズムの成果が政策や経済発展の結果と解釈される日本の違いもあり。第二波フェミニズムはネオリベラリズムと結びつき、保守的なバックラッシュと対立しつつもネオリベ的価値観の補完勢力なってしまったとのフレイザーの批判などは面白い。本書の後半では「女子力」や「女子デモ」などの具体的トピックを扱った量的・質的データを用2021/02/02