感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のっち♬
35
貧困に喘ぎつつ労働の合間も学問に励み、大学進学と大主教を志すデュード。そこから挫折し、「頭の奥底ではわかりすぎるくらいわかっていた」にも関わらず、酒に溺れ、女に嵌められ日陰者になっていく様は著者らしい展開。後半の不倫相手スーの支離滅裂な精神と肉体の錯乱状態の描写は強烈。「人間本能をそれに合わない、いらだたしい時代遅れの鋳型に無理に適応させるところにこそ悲劇が生じる」そこにはヴィクトリア朝への皮肉も多分に込められているのだろう。結果的に酷く批判された最終作だが、ハーディの芸術の一つの到達点でもある代表作。2019/11/07