著者等紹介
巽豊彦[タツミトヨヒコ]
上智大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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NAO
63
身から出た錆とはいえ私生児を生んだ女性の苦しみはたとえようもない。だが、相手の男が罰せられることはない。ルースの激しい怒りは、女性作家にしか書けないものだ。その一方で、元恋人ヘンリの打算と薄情さに恋心が冷めてしまっていたのに、病気ときくと看病に行かずにはいられないルースの心境の複雑さ。同じテーマを扱ったハーディの『テス』と比べ、はるかに女主人公に共感できるのも、やはり作者が女性だからだろう。ヘンリは最後までルースや彼女を支える人々を理解できなかったが、これは、作者が彼を許していないということなのだと思う。2017/06/21
きりぱい
3
自分の美貌は自覚しているというのも無垢さゆえなのか、成長とともに人格を高めてゆくルースの存在にメロドラマの様相が見えていながら、その悲劇に泣きに泣かされてしまう。章ごとのタイトルも思わせぶりで、展開がやや予想できてしまうというところがなんともあれなのだけれど、ギャスケルの宗教色の濃い部分として、信仰の篤さを覗かせる丁々発止に、出たな、と思わせられたり、ヒロイン以外のキャラに個性があっていきいきしているなど、なかなかの読み応え。2009/06/18
takeakisky
1
持てる者の鷹揚さと弱さ、ミスター・ベリンガム。幸福を毟り取られたばかりのルース・ヒルトン。小さな幸せを噛み締めれば噛み締めるほど、後に予想される悲劇の深さが増すようで、どうも読み進めづらい。読むのがつらい。報われることのない無私の生き方。ゆったり流れる中盤。登場人物たちがじっくりと掘り下げられ、愉しい。そして、ああ、ミスター・ダン。読むにつれ強まる、考え方も境遇も全く異なるルースへの同情と共感。陳腐と言えば陳腐、それを感じさせない巧みな技倆。ああ、睡蓮。ルースの世界は幸せに閉じる。残る私には、やるせなさ。2025/03/09
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