感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
236
『マイ・アントニーア』と同じくネブラスカを描いた小説。バーリントン鉄道沿線の町スイート・ウォーターにあった邸宅を舞台に、フォレスター夫人の輝かしいい時代とその凋落の姿が語られる。次々と鉄道が敷設され、それが西部へと伸長して行った時代は、いわば成長期の勢いと富とがそこにあった(ネイティヴ・アメリカンの問題は今はあえて問わない)。その通過点にあったネブラスカは、それゆえの落ち着きとリージョナルな文化とを持っていたのである。そのシンボルがフォレスター夫人であり、彼女の階級の没落は、ある時代の終わりを語っていた。2015/07/28
ケイ
120
若さに溢れ、みずみずしいフォレスター夫人。後半にかけて彼女が変わっていく様は読んでいてつらい。中西部の街は変化していく。それにフォレスター夫人たちの階級は耐え切れなかった。そして、彼女のようにロマンスに走ればそれが終わった時の哀愁の漂い方も、なんともやり切れない。キャザー作品は、教授の家に続いて2作目。作者は女性なのだが、どうにも感情移入しにくい。自然の描写は見事。2017/02/20
まふ
101
米国大陸横断鉄道が開通した西部開拓時代の末期の「鉄道貴族」令夫人の物語。メアリアン・フォレスター夫人は高名な邸宅の美貌の夫人であった。が、夫のフォレスター大尉が脳卒中で煽れてついに死亡してしまう等、時の経過につれて家運が没落し、新興の下品な連中に家屋敷等を根こそぎむしり取られてしまう…。「時」の流れをそのまま見るようであり、「ゆく川の流れは絶えずして…」を地で行くような諸行無情の物語であった。コンパクトな文章の中に十二分に意を尽くした作者の文章力が冴えていた。G579/1000。2024/08/01
扉のこちら側
85
2016年982冊め。【233/G1000】成功と栄光の時代、鉄道建設で財を成した西部開拓者の夫を持つフォレスター夫人が魅力的。彼女にあこがれ続ける少年の目を通して語られるから、より一層そう感じさせられるのだろう。しかし時代は変わり、小さな町はやがて衰退へ向かっていく。ロマンス、ロマンチックな物語の終焉は甘く物悲しい。 2016/11/11
NAO
83
誰もが品の良さを賞賛していたフォレスター夫人は、隠された一面を持ち合わせていた。なのに、これほどまでに清らかで美しい印象を受ける女性は、そういないだろう。それは、語り手ニールが、夫人の不義を知りながらも彼女を清らかな女性として礼賛していたからであり、おそらくは妻の不貞を知っていたであろう夫もそれでも深く妻を愛していたからであり、フォレスター夫人自身も不貞をはたらきながらも心の底では夫を深く尊敬し愛していたからだ。美しいとみんなにちやほやしてほしいというフォレスター夫人の思いからは、邪気が感じられない。2021/03/20