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内容説明
500年の時を生き延びた稀代の古書“サラエボ・ハガダー”。それはなぜ造られ、どんな人々の手で守られてきたのか?鑑定をまかされたハンナがその本の中で見つけた白い毛、塩の結晶、ワインの染み、留め金の痕跡、蝶の羽が、15世紀スペイン、17世紀ヴェネチア、19世紀ウィーン、20世紀サラエボで起きた驚くべき苦難の物語を雄弁に語っていく!運命に翻弄されながらも激動の歴史に耐えた1冊の美しい稀覯本と、それにまつわる人々を描いた歴史ミステリ。翻訳ミステリー大賞受賞作。
著者等紹介
ブルックス,ジェラルディン[ブルックス,ジェラルディン][Brooks,Geraldine]
オーストラリア生まれ。シドニー大学卒業後、シドニー・モーニング・ヘラルド紙で環境問題などを担当。奨学金を得て、コロンビア大学に留学、並行してウォールストリート・ジャーナル紙でボスニア、ソマリア、中東地域の特派員として活躍、その経験をもとに2冊のノンフィクションを執筆する。2001年に、『灰色の季節をこえて』で小説デビュー、好評を博し、2006年『マーチ家の父―もうひとつの若草物語』でフィクション部門のピューリッツァー賞を受賞した
森嶋マリ[モリシママリ]
東京都生まれ。武蔵野美術大学短期大学部デザイン学科卒。英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゆかーん
59
「ハガダー」を巡る旅には、様々な人々の歴史が隠されていました。500年の時を超え、ユダヤ人とキリスト教徒の対立が織り交ぜられた一冊。実話でもあるこの話には、古書に残された軌跡だけでなく、イスラム教徒の学芸員が命がけで守った、価値ある事実も語られています。人から人へ国から国へと渡り歩き、数多くの危機に見舞われながらも、何百年の時を超え、現在サラエボの博物館に大切に保管されている古書。多くのユダヤ人が迫害されながらも、現存に至った一冊の本には、犠牲となった多くの人々の想いが込められているように感じます。2017/01/08
kana
43
翻訳ミステリー大賞受賞作。上巻よりもさらにページを捲る手が止まらなくて、久々に往復の電車とランチと帰宅後と、読み続けました。本書はフィクションですが、500年以上の時を生き抜いてきた本というのは、きっとこんなふうに数々の奇跡に救われてきた本なのではないかと思います。ザーラが絵画の技術で奴隷の人生を切り開いていく頼もしさとその影にある苦悩にはとりわけ胸を打たれます。その肖像画をとても見てみたい。ところで、もし世界中の書物が電子化したらコンテンツの保護の在り方や書物に残る痕跡はどんなふうに形を変えるんだろう。2014/08/12
RIN
28
下巻に入ってこの物語は、古書の来し方というより古書に関わってきた人々と時代の物語なんだな、と。著者は本職のジャーナリストらしい緻密な書き込みが物語を豊潤にしてくれるのだが、ストーリーテーラーとしては少し物足りなかった。一つ一つの物語をもうちょっと突っ込んでくれたらもっともっと物語世界にのめり込めた?という読後感。それでも、主として宗教をめぐる欧州史はとても興味深かった。他国の「今」を知ってるからといって解った気になる愚かさも。やはり「国の歴史」は大事だ。2014/11/08
キムチ
26
古書の来歴の初めも終わりも関わったのがイスラム教。上巻に続き、時代を隔てて様々なエピソードが展開する。ユダヤ民族が受けた迫害・焚書・虐殺そして流浪。そこにエピソードがストンとはまって行く。「People of the Book」そのまま、人の命が、運命が抗うすべもないように弄ばれて行く・・人は生きんがために心にほむらを灯し闘って行くが。自分が見て来た、学んできた知識が如何にちっぽけか。ユダヤ・キリスト・イスラムは永久に和することない。ならば、何を云いたいのか。そして余りにも生臭いハンナ母子の対立。2014/12/28
kochi
17
ハガダーの来歴はレコンキスタ時代のスペインに遡り、ハンナの物語は、驚くべき展開(翻訳ミステリー大賞受賞も納得)を見せ、やがて一つの流れとなって古書に関わる人々の物語を終える。「なぜ、この細密画家はスペインでユダヤ人のために、キリスト教的な画風で、イランの筆を使って絵を描いたのか?… スペインで異なる宗教の信者たちが共存したコンビベンシアという時代…」というハンナの問いかけが、この奇跡的な本の出自と来歴(二度もムスリムの手で消失を免れた)を見事に語り、冒頭のハイネの警句と対をなす本書の核になっているのかも。2022/12/29
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