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内容説明
「姿を見ずに、肖像画を描いてほしい」肖像画家のピアンボに突然声をかけてきたのは、両目が白濁した盲目の男。シャルビューク夫人の使いと称し、法外な報酬を口にして肖像画の製作を依頼してきた。屏風の向こうで夫人が語る、過去の話とその声だけで姿を推測するという、その奇妙な依頼に、やがて画家は虜となっていき…。謎の霊薬、奇病の流行―19世紀末のニューヨークを舞台に鬼才フォードが紡ぎ出す、奇怪な物語。
著者等紹介
フォード,ジェフリー[フォード,ジェフリー][Ford,Jeffrey]
1955年生まれ。米国の作家。1997年の長篇The Physionomy(『白い果実』国書刊行会)を発表するやニューヨーク・タイムズ紙で激賞され、翌年、世界幻想文学大賞を受賞した。また、『シャルビューク夫人の肖像』でも2003年度世界幻想文学賞にノミネートされ、米国ファンタジイ小説界での評価を不動のものとした。さらにGirl in the Glass(『ガラスのなかの少女』早川書房刊)では2006年度MWA最優秀ペーパーバック賞を受賞し、ミステリ小説界からも脚光を浴びた。ニュージャージー州在住
田中一江[タナカカズエ]
東京都出身。東京女子大学卒業。英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
コットン
67
「姿を見ずに、肖像画を描く」という依頼が舞い込み、それとともに奇病の流行が…。特に考えさせられたのは見ることが出来ないと想像する質と力が問われるということ。人は見ることで多くの情報を得ていると同時に本質は見る事以外にもありそうと思わされた作品。2017/10/06
miri
63
19世紀のニューヨーク、画家のピアンボは姿を見ずに肖像画を描いて欲しいという依頼を受ける。シャルビューク夫人を名乗る女性が衝立越しに奇っ怪な、お伽噺のような自分の半生を語る。結晶言語学者、双子の結晶、予言、大金、アヘン、どこまでが真か偽りか、幻想的な告白に手足を絡め取られていく。シャルビューク夫人の夫を名乗る男は誰なのか、目から血を流す奇病とは何なのか。惑わされることがこの物語の本質であり、現実的即物的なものは入り込む余地もない。オチはオマケなのだ。2019/12/17
ヴェネツィア
63
書かれたのは2002年だが、物語の舞台となっているは19世紀末のニューヨーク。1883年に完成したブルックリン・ブリッジが登場する。まだ、現在ほどに夜も煌々と明るいニューヨークではない。むしろ、物語のムードはほの暗い街だ。しいて言えば、ネオ・ゴシックロマンだろうか。万事にミステリアスであるとは言えるが、外面的には幻想的な要素は必ずしも高くない。主人公のビアンボ、そしてシャルビューク夫人、それぞれの心に潜む内なる幻影を描いたとするべきか。全体としては、やや掴みどころのない作品だが、そこがこの小説の魅力か。2013/06/05
辛口カレーうどん
18
表紙が大好きなサージェントの絵だったので読んだのだが、思いの外面白かった!官能的であり、幻想的であり、ハラハラするサスペンス要素もありで、飽きさせない。なんとなく真相は予想できたが、それでも拍子抜けとは思わせない。目に見える世界より、見えない世界の方がずっと色鮮やかで美しいのかも。2018/01/31
藤月はな(灯れ松明の火)
18
読友さんのこの本の感想を読んで興味を持ち、読了。依頼人の姿を見ずに語られる話を基に絵を描き起こすという不思議で不気味な話でした。シャルビューク夫人の儚げでいて存在感がある妖艶な気配にと彼女が語る話の不思議さに溺れる画家に食虫植物の放つ甘い香りに惹き付けられる虫の姿を想像しました。細部に張られた小物が伏線と化す手法も見事です。多分、夫人の姿はこの本を読んだ皆さんの中に存在すると思います。2011/05/24
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