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内容説明
荒涼としたアイルランドの湿原で、赤毛の女性の頭部が発見された。泥炭層の防腐力に守られた死体は、一見しただけでは現代のものか鉄器時代のものかさえわからない。ひょっとすると貴重な歴史的標本になるかもしれないと、考古学者コーマックと解剖学者ノーラは、調査に向かった。だが、現場となる小さな町では、予想外の事件が二人を待ち受けていて…。学者コンビが、時を超えたふたつの事件に挑む、ゴシックサスペンス。
著者等紹介
ハート,エリン[ハート,エリン][Hart,Erin]
1958年ミネソタ州ロチェスター生まれ。ミネソタ州文化局の広報をつとめた経験を持つ。ミネソタ州におけるアイルランド音楽・舞踊協会の設立者。1996年に短篇Waterborneでグリマー・トレイン新人賞を受賞。現在はボタン・アコーディオン奏者の夫とともにミネアポリスに暮らし、頻繁にアイルランドを訪れている
宇丹貴代実[ウタンキヨミ]
1963年、広島県生まれ。上智大学卒。英米文学翻訳者(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
NAO
54
アイルランドやイギリス、スカンジナビアやドイツの湿原の泥炭層からは、考古学的に価値のある遺体が発見されることがあるという。そのため、遺体が発見されると、警官だけでなく考古学者も発見現場に呼ばれることになる。調査の結果、発見されたの、はクロムウェル時代の遺体だと分かった。陰気な泥炭地。その泥炭層から発見された少女の頭部。少女が生きていたクロムウェルの時代と現代をからめたゴシックっぽいミリとなっている。2025/02/17
tom
24
読友さんに教えてもらった本。かなり楽しんで読む。舞台はアイルランド。アイルランドのミステリーとして思い出すのは修道女フィデルマのシリーズ。この本がきっかけでアイルランドの歴史も少しだけ読んだのだけど、そのときの記憶がこの本を読みながらよみがえる。イギリス国教を名目にしたアイルランド・カトリックの虐待・虐殺。これを背景にして泥炭から掘り出された赤毛の女性の頭部。そして、近隣住人の妻と子供の失踪。この二つを解き明かす刑事と人類学者。アイルランドの寒々とした空気感と合わさって、楽しく読了。次作もあるのが嬉しい。2025/03/07
湖都
14
アイルランドの泥炭地で見つかった赤毛の女性の頭部と、数年前の母子行方不明事件が交錯するミステリ。アイルランドに考古学…と私の好物が詰まっているようなので、わくわくしながら読んだ。実際、アイルランドの視覚的な風景よりは、歴史や音楽、言語などの文化的な側面にかなりのページを割いている。興味のない人なら蛇足に感じるかもしれない。物語自体の展開も想像の範囲内であり、少し無理矢理。ミステリを楽しむよりは雰囲気を楽しむ類の物語かと。ゲール語の響きに酔いしれることはできる。2020/03/28
白玉あずき
7
表紙のケルト十字に一目ぼれで購入。この本を読む前にケルト美術や歴史に興味がそれてしまいました。内容は・・・・地味です。丁寧コツコツの描写。ただし登場人物にそれ程の魅力は感じませんでした。それより湿地、泥炭、クロムウェル時代の大変動について等々、どんどん雑学が増えて行くのが楽しい。土壌工学なる物を知ったし、新教とカトリックの権力闘争がらみの確執、議会派の暴虐無残なること、何百年たとうともイングランドに対する恨みが深いことがわかります。ロマンス風味も不完全燃焼なんだけど、次作読もうかな。次の十字は円部分が無い2014/04/19
Mark
3
アイルランドのどんよりした重苦しい片田舎の閉鎖的な風景が目に浮かぶような描写がすばらしい。湿地遺体を知らず、物語中盤でその写真をネットで見てようやく知った。はじめに湿地遺体を見ていたら、もっと情景が理解できただろうに。悔やまれる。じっくり噛みしめて読むミステリー。2014/02/10