文豪の翻訳力―近現代日本の作家翻訳 谷崎潤一郎から村上春樹まで

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文豪の翻訳力―近現代日本の作家翻訳 谷崎潤一郎から村上春樹まで

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  • サイズ B6判/ページ数 431p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784270006658
  • NDC分類 910.26
  • Cコード C0082

出版社内容情報

現代日本語を語る上で欠かせない外国文学の翻訳。作家は何を求めて原文と向き合い、何を得たのか? 比較文学の第一人者の秀作評論

二葉亭四迷、森鴎外の例を待つまでもなく、作家による外国文学の翻訳は日本近代文学の成立に決定的な影響を及ぼした。大正期にも谷崎潤一郎、佐藤春夫、芥川龍之介などが積極的に翻訳を行い、自らの文体を磨き、創作の幅を広げてきた。その頂点とも言うべき存在が村上春樹であり、アメリカ文学の受容と翻訳の取り組みがなければ、現在の村上文学は存在しなかったと言っても過言ではない。
作家たちは果たして何を求めて外国文学の原文と向き合い、何をそこから得たのか? 日本語と日本文学に、翻訳はどんな影響を及ぼしてきたのか? 比較文学の第一人者が、多様な視点から「作家の翻訳」を考察する、畢生の秀作評論。翻訳者、翻訳志望者はもとより、日本語と日本文学に関心のある読者、必読の書。

はじめに
序論(一)作家翻訳をいかに問題とすべきか
 1 作家の翻訳という場
 2 翻訳文学を先導するものとしての作家翻訳――再読『洛中書問』
 3 作家翻訳と創造性の問題
 4 翻訳学の展開と翻訳文学研究の課題
序論(二)戦後翻訳史の転回点と作家=翻訳家村上春樹の出発――1972-1982
 1 戦後翻訳文学史における六〇年代と七〇年代
 2 村上春樹のフィッツジェラルド体験
第二章 大正作家の翻訳
 1 外国語と母語との間で:大正作家の翻訳
 2 谷崎潤一郎訳トマス・ハーディー
 3 佐藤春夫訳エドガー・アラン・ポー
 4 芥川龍之介訳テオフィール・ゴーティエ
第三章 翻訳者としての詩人たち
 1 「方便」としての翻訳――三好達治の翻訳
 2 逐語訳から本歌取りとしての翻訳へ――立原道造訳テーオドール・シュトルム
 3 ファンタジーを訳すには――堀口大学の訳業
第四章 戦後作家は何を訳そうとしたのか
 1 幻想の叙法――中村真一郎訳ジェラール・ド・ネルヴァル
 2 悪夢を訳す――長谷川四郎訳フランツ・カフカ
 3 瑞々しくもしたたかな語りを訳す――三浦朱門訳ウイリアム・サロイヤン
 4 音楽の予感――古井由吉訳ローベルト・ムージル
 5 短篇小説翻訳作法――吉行淳之介訳ヘンリー・ミラー
 6 「声」の再生――富岡多恵子訳ガートルード・スタイン
 7 字幕から翻訳へ――池澤夏樹と世界文学
 8 アンチヒーローの系譜を訳す――小島信夫訳バーナード・マラマッド
 9 人称代名詞の間に――野坂昭如訳トルーマン・カポーティ
おわりに

【著者紹介】
1948年、東京生まれ。東京大学文学部仏文科に進んだが、英文科に転じて卒業、同大学院比較文学比較文化専攻修士課程修了、大谷女子大学専任講師、神戸大学助教授、京都大学助教授、東京工業大学教授を経て、2005年から東大大学院総合文化研究科教授。2007年日本比較文学会会長に就任。2008年東大比較文学会会長。2008年東大比較文学会会長。主な著書に、『現代アメリカ文学を翻訳で学ぶ』(バベル・プレス)、『翻訳街裏通り わが青春のB級翻訳』(研究社出版)。主な共編に、『翻訳の方法』(川本皓嗣共編、東京大学出版会)、『翻訳を学ぶ人のために』(安西徹雄,小林章夫共編、世界思想社)。主な訳書に『セクサス 薔薇色の十字架刑』ヘンリー・ミラー(水声社)、『リンドバーグの世紀の犯罪』グレゴリー・アールグレン、スティーブン・モニアー(朝日新聞社)などがある。

内容説明

村上春樹の精力的な訳業は、二葉亭四迷、森鴎外の「作家翻訳」の伝統を引くものか?文学が行き詰まったとき、転機に差し掛かったとき、現状を打開し新たな可能性を切り拓くものとして、「作家翻訳」は期待され、また機能してきた。作家たちは何を求めて翻訳に挑み、そこから何を獲得したのか?大正期から戦後までの「作家翻訳」の意味と変遷を、多様な視点と綿密な論考でたどった秀作評論。

目次

序章(1) 作家翻訳をいかに問題とすべきか(作家の翻訳という場;翻訳文学を先導するものとしての作家翻訳―再読『洛中書問』論争 ほか)
序章(2) 戦後翻訳史の転回点と作家=翻訳家村上春樹の出発(一九七九‐八二)(戦後翻訳文学史における六〇年代と七〇年代;村上春樹のフィッツジェラルド体験)
第2章 物語作家たちの試み(語りの戦略を訳す(谷崎潤一郎)
翻訳批評、翻訳から創作へ(佐藤春夫) ほか)
第3章 翻訳者としての詩人たち(「方便」としての翻訳(三好達治)
逐語訳から本歌取りとしての翻訳へ(立原道造) ほか)
第4章 戦後作家は何を訳そうとしたのか(幻想の叙法(中村真一郎)
悪夢とユーモアを訳す(長谷川四郎) ほか)

著者等紹介

井上健[イノウエケン]
1948年、東京生まれ。東京大学大学院比較文学比較文化専攻修士課程修了。神戸大学助教授、京都大学助教授、東京工業大学教授を経て、現、東京大学大学院総合文化研究科教授。前日本比較文学会会長(2007‐2011年)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

かもめ通信

21
著者は自らも翻訳を手がけてはいるが学会の会長もつとめた日本比較文学者。文豪達の語学力や翻訳力をめぐる面白おかしくあれこれ紹介してくれる本だとおもって手にしたら、かなり本格的な論文集!という雰囲気だったので、冒頭はちょっと戸惑ったものの読み始めてみるとこれが実に興味深かった。 (詳しくは長文レビューで) 2016/05/30

月華

2
図書館 2011年8月発行。辛口の評価が多いような印象でした。2022/06/14

海野藻屑

1
言葉の主人であるひとが言葉を使うことで初めて命を宿す。言葉にはその人の人生が反映されるのでしょうか。2017/11/24

takao

0
ふむ2017/10/28

garyou

0
最初、思つてゐたのとちがふなーと思つたが、案外おもしろく読めた。気に入つたのは中島敦と耽美派の話と、池澤夏樹とアップダイク、ヴォネガットの考察。2012/03/06

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