古書の来歴

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  • サイズ B6判/ページ数 519p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784270005620
  • NDC分類 933
  • Cコード C0097

出版社内容情報

100年ものあいだ行方が知れなかった稀覯本「サラエボ・ハガダー」が発見された。連絡を受けた古書鑑定家にハンナは、すぐさまサラエボに向かった。ハガダーは、ユダヤ教の「過越しの祭り」で使われる、ヘブライ語で祈りや詩篇が書かれた書である。今回発見されたサラエボ・ハガダーは、実在する最古のハダガーとも言われており、500年前、中世スペインで作られたと伝えられていた。また、ハガダーとしてはめずらしく、美しく彩色された細密画が多数描かれていることでも知られていた。それが1894年に存在を確認されたのを最後に紛争で行方知れずになっていたのだ。鑑定を行なったハンナは、羊皮紙のあいだに蝶の羽の欠片が挟まっていることに気づく。それを皮切りに、ハガダーは封印してきた歴史をひも解きはじめ……。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

紅はこべ

123
芸術作品の来歴を現在から過去に遡って語るという、『ヒヤシンス・ブルーの少女』が好きな方にはお薦めの一冊。これは本だけど、文学というより、美術工芸に近いかな。ユダヤの書物ハガダー(出エジプト記を語ったもの)の保存修復を請け負った豪州の専門家ハンナが本から謎の痕跡を発見、その次の章はそれについての真相が語られるという構成。ハンナの章では母との葛藤も重要なポイント。時代や国を超えて迫害されるユダヤの歴史。本を守ろうとした人々。読み終えた後、エピグラフのハイネの言葉が身に沁みる。2017/10/09

星落秋風五丈原

100
現代パートと過去パートに分かれて進行。現代パートの主人公はオーストラリア人の古書鑑定家のハンナだ。書籍には、他にも、ワインのしみ、血、羽、塩の結晶など様々なものが付着しており、彼女はどこでどのようにこれらのものが付着したかを探る。その過程は、ヒロインがサラエボで出会ったばかりの学芸員とその夜ベッドインするという展開も含めてアメリカ刑事ドラマCSIのようだ。ヒロインの現代パートは、本の来歴を過去へ過去へと遡って様々な人々のドラマを映し出す過去パートにのめりこむには正直邪魔と思っていたがこれには訳がある。2015/05/31

財布にジャック

86
素晴らしいです!500年の歴史を奇跡的に生き抜いた「サラエボ・ハガダー」と呼ばれる一冊の本をめぐる壮大な歴史絵巻に、どっぷりと浸らせていただきました。本が辿ってきた地を舞台にさまざまな人間ドラマが描かれているので、登場人物が沢山いて、ちょっと読むのが大変でしたが、それにも勝る面白さで、もう夢中で一気読みでした。この物語は、ユダヤ人の歴史そのものなんですね。そして「サラエボ・ハガダー」がサラエボの国立博物館に実在すると知って、是非いつか実物を見てみたいと思いました。2011/11/29

seacalf

69
実在する希少本、サラエボ・ハガダー。スペインの地でユダヤ人の為にキリスト教的な画風でイラン製の筆で描かれたという細密画の紹介ひとつとっても、複雑にならざるを得なかったユダヤの歴史をよく表してもいるこの本を題材に、主人公ハンナのパートと、古書に残る様々な手がかりにまつわる人物達をあらゆる時代、国から浮かび上がらせて大いに語ってくれるパート、この2つが展開していく。好奇心を掻き立てるこの構成が実に見事。ユダヤの人々への弾圧描写と母娘の確執があまりにも痛々しいのが玉に瑕だが、ぐいぐい読ませることは間違いない。2017/05/13

NAO

67
実在する「サラエボ・ハガター」を巡るミステリ仕立。サラエボ・ハガターとは、中世のスペインで作られた稀少本で、ユダヤ教があらゆる宗教画を禁じていた時代にもかかわらず、ヘブライ語のその手書きの本には全ページに細密画が描かれている。サラエボ・ハガターを軸として描かれる現代のサラエボ。ハガターに残されていた一つ一つの物的証拠から語られるハガターがたどった艱難辛苦の歴史。実際のハガターに虫の羽がはさまっていたり、シミがあったりしたのかどうかは分からないが、いかにもありそうな話は、息をもつかせない展開となっている。2022/04/12

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