感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
スミス市松
7
嘘をつき続けて押し通した者が称賛されたり、実物や実感以上を示して人を騙したり、競い合うように盛って人の上に立とうとしたりする、そんなことがまかり通る世の中だからこそ、罪の意識やトラウマや自らの情けなさを忘れることなく背負いながら生き抜き、「過去を未来につなぐ」ために書いてきたティム・オブライエンの作品を読む必要性はますます高まっている。本著では作家のキャリアや彼の作品中の様々な技法に注目しつつ、その文学を「戦争文学」から「生存者の文学」「平和文学」へと捉え直している。貴重な評論だった。2025/01/03