出版社内容情報
南原繁――戦中戦後を通し、徹して反戦主義を貫いた信念の人戦後最初の東大総長として、敗戦に打ちひしがれた日本国民を鼓舞し、日本の針路の理想を示した男!
原動力となったのは、幼き日の母との約束。一高時代の新渡戸稲造、内村鑑三との出会い。
東京帝大教授として反戦を目指しながらも、教え子たちを戦場に送り出す苦悩を味わいながら戦争と対峙していった。
村木嵐[ムラキラン]
著・文・その他
内容説明
あの日、「総長演説」が敗戦国日本を蘇らせた!学問と信仰で戦争に対峙した戦後最初の東大総長・南原繁の生涯を描く歴史長編。
著者等紹介
村木嵐[ムラキラン]
1967年京都市生まれ。京都大学法学部卒業。会社勤務等を経て、95年より司馬遼太郎家の家事手伝いとなる。司馬遼太郎氏の没後、夫人である福田みどり氏の個人秘書を19年間務める。2010年『マルガリータ』で第17回松本清張賞を受賞し、作家デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
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trazom
54
南原繁先生の評伝小説。私は、かねがね、終戦直後の東大総長が、南原繁、矢内原忠雄と二代続けて敬虔なキリスト者であったことを奇跡だと感じている。南原、矢内原に加え、三谷隆正、森戸辰男、高木八尺など、新渡戸稲造と内村鑑三に影響を受けた人たちの人格的高潔さには、胸が熱くなる。占領軍のお仕着せであった憲法に対し、わが国独自の教育基本法の制定に魂を込めた人たちの執念が、戦後の発展の礎となった。「人生の目的は人格だ」という新渡戸先生の理念を受け継ぎ、真善美と正義を追求した多くの人格者たちの群像が、この本の中にある。2020/06/27
おさむ
32
東大総長を務めた南原繁の評伝。東大法学部をはじめとする学会が戦争によっていかに翻弄されたかを、詳細に再現している。人物が中心に描かれているので、下手な専門書よりも当時の時代の流れが掴みやすい。とはいえ、人物像が表層的で単調なので、なんだか勉強本みたいな印象は否めない。著者はあの司馬遼太郎家の家事手伝いから、奥さんの福田みどりさんの秘書を務めたという異色の経歴の持ち主。ちょっと期待したのですが、期待外れでした。2019/10/21
樋口佳之
30
https://www.u-tokyo.ac.jp/ja/about/president/b01_03.html 歴代総長を確認して、東京大学がキャッチフレーズを決めているの知りました。「志ある卓越」うー/お話としては、人となりと時代が良くわかるのですけど、再現ドキュメンタリー番組を見ているような感覚が残りました。2020/07/01
kawa
28
主人公・南原繁は戦中~戦後にかけて、東大に在籍した政治哲学者で学長も歴任した方。やや専門的で難解なところもあるが、当時の学会を担った有名学者が目白押し登場で、学会の雰囲気や新憲法制定の事情や周辺が知ることができる興味深い一作。著者は司馬遼太郎氏の秘書の経歴がある、南原の恩師・小野塚喜平次は日露戦に対露強硬策を唱えた帝大七博士の一人として参謀総長・大山巌から「きょうは馬鹿七人がきた」と称された人(本書によれば小野はこの行動を後悔している)、徳富蘆花の話等、司馬氏の「坂の上の雲」の後書きにも紹介されている。2019/05/29
あまね
16
袖が触れ合う程の微かなご縁がある南原繁氏の評伝と伺い、読んでみました。南原氏の歩みとともに戦前から戦後の歴史が浮き彫りにされ、作者はかなり力を込めて書かれたのだと推察します。第二次世界大戦では東大も大きく揺れ、苦難と苦悩に苛まれていたのは知りませんでした。教育、戦争、戦後処理、憲法等々、難しいお話が続くので仕方がないとは思いますが、もう少し柔らかなところがあればもっと読みやすかったなぁと思います。それでも、今、私たちが教育を享受できるのは、南原氏をはじめ先人たちの思いに支えられていたのがよく分かりました。2019/11/28