目次
なぜ今、アジア主義なのか
竹内好はアジア主義に何を見たのか
西郷隆盛と征韓論
なぜ自由民権運動から右翼の源流・玄洋社が生まれたのか
金玉均という存在
頭山満、動き出す
来島恒喜のテロと樽井藤吉の『大東合邦論』
天佑侠と日清戦争
閔妃暗殺
孫文の登場―宮崎滔天・内田良平・南方熊楠〔ほか〕
著者等紹介
中島岳志[ナカジマタケシ]
1975年、大阪府生まれ。北海道大学大学院法学研究科准教授。大阪外国語大学でヒンディー語を専攻。京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科博士課程修了。専門は南アジア地域研究、近代思想史。2005年、『中村屋のボース』で、大佛次郎論壇賞、アジア・太平洋賞大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 2件/全2件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
nbhd
19
まず、自分があまりに歴史を知らないことに愕然とした。アジア主義をめぐる時代と人間を記した本。どうやらアジア諸国と日本の間にある「歴史認識」のミゾは、この「アジア主義」周辺に由来するようだ。中国研究者・竹内好によるとアジア主義は「政略」「抵抗」「思想」のカテゴリーに分けられる。西洋列強に対する「抵抗」(日本にとっては「アジアの解放」)のアイデアは、時代とともに「政略」へと転換、ついに「思想」へと昇華することはなかった。金玉均や宮崎滔天など知らない名前が次々登場するから、勉強意欲を掻き立てられっぱなしだった。2016/10/26
とんこつ
8
抑圧されたアジアの民の解放を謳い西洋的近代の超克を志向したはずのアジア主義は、やがて満州事変や日中戦争、太平洋戦争などの戦争を支える理論的支柱へと変貌をとげてしまった。この変質はいつ、どのように発生したのか、明治維新からの日本の近代化の足跡を辿りながら本書はそれを探求していく。その探求は、アジア主義者たちの純粋な理想が、戦争という強大な暴力に回収されていく過程をトレースすることでもあり、読んでいて非常に胸が痛くなる。玉石混淆なアジア主義から原石を取り出したい、という筆者の問題意識には共感を覚えた。2017/09/03
ゆうきなかもと
6
日本と中国、韓国の関係が一筋縄でいかない理由がよくわかる。 自由民権運動から太平洋戦争までのアジア主義のあり方とその問題、そしてその可能性までを描いている。思想をテーマとした群像劇としても楽しめる。2015/08/15
hwconsa1219
6
民族も違えば宗教もさまざま。サッカーの予選でもどこか違和感を感じるほどの違いがある「アジア」という地域についての思想史や史実を解説してくれている本。ボリュームがあり「おなか一杯」になりますが,欧米の脅威からの脱却(排除)とアジア同胞の一致団結を目的としていたはずの主義思想が,いつどのように変節していったのかを知ることができます。願わくば大学の通年講義でじっくり学びたい内容です。2014/11/19
Yuki2018
4
初期アジア主義は、東洋的王道・アジアの連帯により、帝国主義による侵略に対抗する軸があった。それが次第に変質し、日本の帝国主義化に繋がる経緯が解説される。日本における対アジアの優越感と西洋列強への屈辱感の醸成、中国で滅満興漢から五族融和(漢民族への同化)に舵を切った辺りの歴史は、重要で知っておくべきもの。著者の主張のうち、石原のような直線的理想主義ではなく、多元的世界の受容を特徴とする思想的アジア主義を追求すべきとの考えには賛成だが、米国から離れ中国と手を組もうという主張には現実味がなく合意できない。2020/11/22