内容説明
流謫のナポレオン、剣を言葉にかえた最後の闘い。ナポレオン研究の泰斗、渾身の編訳、ついに完成。
目次
受難への道
セント=ヘレナ島へ
赤道通過
上陸
ブライヤーズの小径
ロングウッド
幽囚
時の壁
新任総督
死の影の下で
悲劇の回想
深まる亀裂
窮乏
迫る雷雨
落日の栄光
別離
著者等紹介
小宮正弘[コミヤマサヒロ]
1941年生まれ。東京大学文学部卒業。仏文専攻。出版社入社後、パリ国立図書館版画部に出向。のちフランス国立東洋言語文化学院大学(INALCO)講師を経て、静岡産業大学情報学部教授(比較文化社会論)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
misui
9
以前何の気なしに世界地図を眺めていた時に、アフリカ西の洋上に小さな島を見つけた。セント=ヘレナという聖女の名前を冠するこの島は、ナポレオン幽閉の地として知られている。本書は当地でのナポレオンの日々を、随行した侍従ラス・カーズの手で綴ったもの。正直なところナポレオンの事績については不案内ゆえ、大半を占める戦史記述はよくわからない。だが一度は全ヨーロッパに覇を唱えた人物の最後の姿は、たとえ敗残の時を過ごしているにしても、深く心を揺さぶる。特異なロマンを生きた精神の証言はいつまでも価値を失わないだろう。2013/03/01
権現
4
革命期フランスにおける名誉と栄華の果てに、セント=ヘレナ島での流刑と幽閉という晩年を過ごしたナポレオン・ボナパルト。そこに侍従として同行したラス・カーズによる日記。島流しなのでドラマティックな展開が起きるわけもなく、内容自体は流刑地生活が延々と続くもの。しかしそんな中で、はじめは誇りに満ちていたナポレオンが徐々に弱っていき、昔話に耽るしかなくなっていく姿。そして何より人からも情報からも隔絶された恐ろしく単調な毎日の様子を通じて、流刑の生々しいしんどさにやられる。ナポレオン自身の器の大きさがせめてもの救い。2015/04/18
Darbytime
0
ナポレオンの小説を読んだ影響で読了。みんなとトランプしたり、勉強中に居眠りをしたり、時には従者にいたずらをしかけて楽しむ皇帝陛下。そしてたまに見せる英雄っぽい立ち振舞。ラスカーズの皇帝への愛の深さはちょっとひくが、すごく魅力的な人なのは理解できる。最後の手紙もドラマ的すぎ。2019/10/21