内容説明
傑作「ヴィルヘルム・マイスターの遍歴時代」。壮麗なバロック建築を髣髴とさせる傑作ロマン。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
twinsun
6
ゲーテの忘備録のような箴言集にヴィルヘルムの船出が霞み拡散し外伝の序章の集合と化した物語に幕が下りる一人の人間の物語が精神世界に収斂し、一人で何もかも収めようとしたゲーテ自身の生き方に限界が来たことを自ら告げるような物語。資本主義、植民地主義、共産主義、専門化とグローバリズムを見据えて階級社会の現状是認と破壊の芽を撒き、死刑制度廃止に言及し、老いてなおかつ学び美女や若者と交じ合うことをやめようとしない老醜などが暴走気味に展開してゆく。なお余命あれば更に高みに達したであろう。2023/01/02
泉のエクセリオン
3
「ウィルヘルムマイスターの修業時代」の続編。執筆の動機の一つに、シラーが生前に「修業時代を終えたウィルヘルムは何処へ行くのか?」と聞かれたからだという。修業時代を終えたウィルヘルムは、息子のフェーリクスと共に各地を前作の登場人物と再会しながら遍歴し、「塔の結社」の使命を果たして行く。前作では演劇人として描かれていたが、今作では外科医としてのスキルを身につける。各人が各々の天分にあったスキルを身につけ、社会に有用な人間になっていく長編小説・・なのだが活躍するはずの社会をゲーテをして、やはり描くことが出来ない