内容説明
「ひとつの物語を話してあげよう―」世界的に有名なバイオリニストのパオロ・レヴィの秘密はかつてナチスの強制収容所でくり返された悲しい記憶とつながっていた。美しい水の都、イタリア・ヴェニスを舞台に描かれた人間のたましいふれる物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
422
著者の名前のモーパーゴという面白い響きに魅かれて購入。絵のマイケル・フォアマンとの合作といった趣きの本。ナチスのユダヤ人収容所での過酷で残酷な両親の体験をパオロ・レヴィという世界的なヴァイオリニストがインタビュアーに語る構成をとる。場所はヴェネツィア。フォアマンは、表紙に採られたサン・マルコ広場の絵もそうだが、いずれもヴェネツィアの風景をノスタルジックに描き出してゆく。モーパーゴの語りもまたそうだ。強制収容所での体験もまたセピア色に霞みかねない危険と紙一重の危うさである。あの歴史を語り継ぐ入り口ではある。2019/12/18
Hideto-S@仮想書店 月舟書房
101
「一つの物語を話してあげよう……」。インタビュー嫌いで知られる世界的ヴァイオリニストに取材する機会を得た新米記者。緊張のためタブーとなっている質問をしてしまった。「なぜモーツァルトを演奏しないのですか?」。しかし、ヴァイオリニストは静かに語り始めた。子供時代の思い出を。父と交わした約束を。やがて、物語はナチス収容所の悲劇に向かっていく……。音楽が繋いでくれた命と絆。一度は封印しようと決めた過去。だけど、生きるためには音楽が必要だった。マイケル・フォアマン氏の絵が物語を優しく彩っている。2010年7月初版。2016/01/17
NAO
79
アウシュビッツの音楽隊。だが、この音楽隊は、ドイツ人の兵士たちを楽しませるためだけではなく、別の目的のために作られたものだった。自分が生き延びるためには、演奏をするしかない。しかし、その演奏には常に罪悪感が付きまとって彼らを苦しめる。戦後、別れ別れになった音楽家たちのそれぞれの判断は、彼らの心の傷がどれほど重く深かったかを物語っている。「モーツァルトは弾かないでくれ」という父の言葉は、あまりにも辛い。本当は、誰よりも彼が、戦前の明るい心に戻ってモーツァルトを弾きたかったはずだろうに。2018/05/24
♪みどりpiyopiyo♪
54
「ひとつの物語を話してあげよう―― 」 世界的バイオリニスト、パオロは決してモーツァルトを演奏しない。その理由は… ■哀しくやるせなく、そして美しく崇高な物語を読みました。世代を超えて語り継ぐこと。■人間はどこまで残酷になれるのか。日本やアジアの国々だけでなく、他の国も未だあの時代の心の傷は癒えてないのだと実感します。■人間の所業に打ちのめされそうになっても、そこから這い上がり 前を向いて生きて行くことができる。私達は過酷な経験に耳を傾けることから始めなくては。(文 2006年、絵 2007年)(→続2019/08/14
tokotoko
42
新米編集者のレスリー。急に上司から電話があって、ヴェニスでバイオリニストのパオロのインタンビューを頼まれます。でも細かい制約があって!「モーツァルトの質問はしない」「プライベートの質問はしない」「速記で書くこと」。さて、どんなお話が聞けたのでしょうか・・・?この絵本ね、外の景色がいつも青空です。ただある部分だけは、夜空も空も暗い。そこが、「悲しみ」の集約ポイントです。でもね、悲しみの終わりはまた青空です!私は、パオロのお母さんがとても心に残りました。悲しみを、未来につなげてて!自分よりも人を支えてて!2014/05/08
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- 七まいの葉 講談社文庫