感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
tieckP(ティークP)
3
江川卓の『謎解き~』について誰かが、翻訳をするなかで生じた解説欲が書き出されたのだろう、と言っていたけれど、この登張による『遍歴時代』の解説書も同じたぐいらしい。本人は何度か作品全体を通したマカーリエの影響力の重要性を訴えていて、そこに論の一番の力点を置きたいらしいけれど、他方、この本は『○○を読む』といった本だ、とつまり全体を通しての副読本であることも主張していて、内容に統一感がない。ただし資料の読み込みは素晴らしく、十年がかりの訳業の記念碑といったスケール感はある。ちぐはぐだけど結構好きな本の部類。2013/08/25