出版社内容情報
《内容》 胃・十二指腸潰瘍や胃食道逆流症などの胃酸関連疾患は古くて新しい問題である。ヘリコバクターピロリ発見後の新知見も含め、胃酸関連疾患の病態と治療について、消化器病学の分野で世界的に著名なModlinとSachsが、貴重な写真、美麗な図を豊富に織りまぜながら、研究の歴史に見事な総括を与えるとともに、新たな視座を提供している。 《目次》 目次はじめに … xix1 胃における酸の産成 … 1第1章 酸の発見 … 3 古代から18世紀まで … 3 消化物質の性質 … 5 塩酸の発見 … 8第2章 イオンポンプの発見 … 10 生体力学と化学的浸透 … 11 P・ATPase … 12第3章 イオン輸送ATPase … 14 Multimeric pumps(多サブユニットポンプ) … 14 Oligomeric pumps(少サブユニットポンプ) … 15第4章 胃酸分泌ポンプ … 19 H,K・ATPaseの反応経路 … 19 H,K・ATPaseの速度論 … 20 膜電位とH,K・ATPase … 22 胃H,K・ATPaseの二次元構造 … 22 PタイプATPaseの三次元構造 … 30 H,K・ATPaseの構造・機能モデル … 32 文献 … 342 胃酸分泌の調節 … 37第1章 胃の生理についての進歩 … 39 胃瘻:たぐいまれな好機 … 39 内部環境“Le Milieu Interieur” … 42 胃酸分泌の定義 … 43 消化という概念 … 44 迷走神経の生理学と胃機能 … 45 潰瘍モデルとEGF … 48 ヒスタミンの役割 … 49 ホルモンの発見 … 54第2章 胃酸分泌 … 62 中枢性調節 … 63 胃酸分泌の神経性調節 … 65 パラクリン調節 … 68 内分泌調節 … 68 胃液酸度の調節 … 69 細胞の調節 … 70 G細胞 … 84 D細胞 … 88第3章 酸分泌細胞 … 91 酸分泌細胞の発生 … 92 形態 … 92 受容体 … 92 細胞内情報伝達 … 97 H,K・ATPaseの活性化 … 101 H,K・ATPaseの組み立てと輸送 … 102 H,K・ATPaseの合成と回転 … 103 酸分泌細胞の恒常性homeostasis … 104 文献 … 1073 酸分泌の薬理学 … 109第1章 酸関連疾患に対する薬物治療の歴史 … 111 治療の発展 … 111 食事療法 … 111 外科療法 … 112 制酸剤―粘膜保護薬 … 112 保護薬 … 113 胃の受容体 … 113 アトロピン系薬物 … 114 プロスタグランジン類 … 114 H2受容体拮抗薬 … 115 ガストリン拮抗薬 … 116 プロトンポンプ阻害剤(PPI) … 117 酸ポンプ拮抗薬 … 117第2章 ヒスタミンH2受容体の抑制 … 118 ヒスタミン受容体拮抗薬 … 118 ヒスタミンH2受容体 … 119 H2受容体拮抗の薬理 … 120第3章 胃酸ポンプの阻害 … 123 薬物の標的としてのATPase … 123 胃H,K・ATPaseの標的アミノ酸 … 124 Na,K・ATPaseのジゴキシン標的 … 124 H,K・ATPaseの標的部位 … 125 ピリジルメチルスルフィニルベンズイミダゾール誘導体 … 125 K拮抗型阻害剤 … 135 in vivoでのプロトンポンプ阻害剤による酸分泌抑制 … 136 in vivoにおける酸ポンプ拮抗薬による阻害 … 139 文献 … 1404 酸関連疾患の生物学 … 145第1章 上部消化管の粘膜関門 … 147 はじめに … 147 歴史的背景 … 147 食道粘膜上皮 … 149 食道による酸・ペプシンの処理 … 150 PPIによるGERD治療の理論的根拠 … 151 胃の上皮 … 152 十二指腸関門 … 156第2章 胃内pH … 158 低酸症hypochlorhydriaと無酸症achlorhydria … 158 胃酸分泌の計量化 … 159 胃酸分泌に影響を与える因子 … 160 低酸状態 … 161 ガストリン値とPPI治療の臨床的意義 … 164第3章 ペプシン … 165 ペプシノゲンの歴史 … 165 ペプシノゲンの性質 … 168 ペプシノゲン … 170 分泌調節 … 170 ペプシノゲンの意義 … 173第4章 内因子 … 175 歴史的論点 … 175 コバラミン … 175 内因子 … 176 コバラミンの吸収 … 177第5章 胃粘膜上皮増殖調節 … 179 はじめに … 179 胃の細胞増殖 … 179 胃粘膜の増殖受容体 … 180 上皮修復 … 181 粘膜治癒とtrefoilペプチド … 181 胃粘膜治癒の阻害 … 186 文献 … 1875 胃・十二指腸潰瘍 … 189第1章 歴史 … 191 はじめに … 191 初期の消化性潰瘍の治療 … 193 胃外科 … 197 迷走神経の外科 … 201第2章 消化性潰瘍 … 211 総論 … 211 病因 … 213 pHと消化性潰瘍 … 214 診断 … 215 内科的治療 … 215 消化性潰瘍の合併症 … 222 高ガストリン血症 … 228第3章 胃カルチノイド … 234 組織学 … 234 発生 … 234 実験モデル … 237 臨床的考察 … 237第4章 dyspepsia … 244 非潰瘍性dyspepsia(non・ulcer dyspepsia;NUD) … 244 dyspepsiaと胸やけ … 246第5章 酸分泌抑制剤の静脈内投与 … 248 H2受容体拮抗薬とプロトンポンプ阻害剤(PPI) … 248 酸分泌抑制剤静脈内投与による急性期の適応 … 248 酸分泌抑制剤静脈内投与の外科的適応 … 250 文献 … 2516 胃食道逆流症(GERD)―新ミレニアムにおける疾患 … 253第1章 疾患としての進化 … 255 病因 … 258第2章 生物学 … 261 食道上皮 … 261 食道の解剖と生理 … 262 胃食道接合部 … 262 下部食道括約筋 … 263第3章 生理学と運動機能の研究 … 264 食道の機能テスト … 264 病態生理学 … 268第4章 治療 … 271 GERDにおける下部食道括約筋の機能 … 271 治療目標 … 272 胃内酸性度 … 275 GERDと食道pH … 276 Helicobacter pylori … 277 GERDの診断と治療 … 278 経済性 … 284第5章 Barrett食道 … 287 食道上皮の悪性形質転換 … 287第6章 コンセンサス … 292 治療のコンセンサス … 292 文献 … 2967 HELICOBACTER PYLORI … 299第1章 歴史 … 301 はじめに … 301 初期の細菌学 … 301 初期の胃の細菌学 … 302 20世紀にはいって … 305 アンモニアと胃ウレアーゼ … 309 H. pyloriの発見と消化性潰瘍の病因としての役割 … 310第2章 Helicobacterの胃内集落形成に関する生物学的基礎 … 312 はじめに … 312 細菌の生物エネルギー論 … 312 H. pyloriの構造 … 314 細菌のゲノム … 314 H. pyloriの生存および増殖の特徴 … 315 H. pyloriの生物エネルギープロフィル … 316 細胞質pH … 316 膜電位 … 316 ウレアーゼ活性化によるH. pyloriの酸への適応 … 319 ウレアーゼ活性と増殖 … 323 表面ウレアーゼ活性 … 323 ウレアーゼはH. pyloriに不可欠である … 325第3章 病原性 … 326 接着 … 328 免疫的効果 … 328第4章 感染と帰結 … 329 感染後の胃酸分泌 … 329 H. pyloriとその胃内生育環境 … 330 潰瘍の病因としてのウレアーゼとNH3の役割 … 333 MALTリンパ腫Mucosa Associated Lymphoid Tissue(MALT)lymphoma … 335 診断 … 338 疾患の実体(実態)との関係 … 339 疫学 … 340 治療 … 340 経済性とデータの解析 … 342 文献 … 34521世紀へ … 349索引 … 351
内容説明
本書は胃酸分泌およびその調節機構について、初期の研究から21世紀を直前にした現時点までの研究の歴史を振り返って考える目的で書かれたものである。今までに構築されてきた基盤に立脚して現代医学が進歩してきたことを述べるとともに、胃酸関連の消化器疾患の最先端の臨床治療について明確にふれることを特に意図したものである。
目次
1 胃における酸の産成
2 胃酸分泌の調節
3 酸分泌の薬理学
4 酸関連疾患の生物学
5 胃・十二指腸潰瘍
6 胃食道逆流症(GERD)―新ミレニアムにおける疾患
7 HELICOBACTER PYLORI
著者等紹介
サックス,ジョージ[Sachs,George]
George Watsons大学およびエジンバラ大学で教育を受け、生化学を専攻し、B.Sc.,M.B.,Ch.B.,D.Sc.の学位を取得している。20世紀の後半3分の1は胃酸分泌機序の研究、特にオルガネラ、器官、分泌腺、壁細胞および分子レベルまで幅広い研究に従事し、最近では内分泌細胞調節、ポンプおよびポンプ阻害機構と胃内細胞H.Pyloriの生理学に深い関心を持って研究を続けている。教授の研究の前半はアラバマ大学で、後半はUCLA,Wadsmorth復員軍人病院で現在も継続されている。消化器領域で、Alexander von Humboldt賞、Beaumontメダル、Middleton賞、Davenportメダル、Hofffman La Roche賞、Ismael Boasメダル、Janssen Achievement賞を受賞し、スウェーデンのGoteborg大学から名誉博士の称号を授けられる。UCLA医学部Whilshire地区の議長を務め、現在UCLA医学部・内科・生理学教授であり、米国復員軍人局の首席研究医である
モドリン,アービン[Modlin,Irvin M.]
南アフリカのOudtshoorn出身、ケープタウン、ダブリン、リーズ、ロンドンで教育を受け、1968年ケープタウン大学で最優秀学生として首席でM.B.を取得し、また、’75年には南アフリカ外科学会および王立エジンバラ外科学会から外科学金メダルを授与された。その後、ロンドンのHammersmith病院・王立大学院医学研究科で、消化器および内分泌外科学を専攻(’75~77年)し、また、UCLAの消化性潰瘍研究教育センター(CURE:Center for Ulcer Research and Education)で、消化管ホルモン生理学の研究に従事した(’77~79年)、’87年にエール大学で名誉文学修士を取得し、’89年にケープタウン大学から分子生物学で、Ph.D.を取得した。’89~90年にフルブライト奨学金を受け、’91年にはスウェーデンのGothenberg大学から名誉医学博士の称号を授与された。こまれでに、’94年ヨハネスブルグでI.N.Marks講演、’95年ブダペストでJena Polya記念講演、ロンドンでArris and Gale講演、’96年ベルリンでTheodor Kocher講演を行った。’97年には英国王立外科学会からHunterian教授、’98年には評議員に選ばれた。はじめ、酸に興味を抱き、細菌によるリンゴ酸から乳酸への発酵過程の研究に没頭した。引き続き、美術の他、料理法や葡萄酒醸造の科学にも興味を示すようになり、関心は「食」へと拡大していった。胃酸分泌の研究に多大な功績を残した医師、BeaumontおよびProutクラブの熱烈な会員として、酸の歴史および化学的洞察についての興味は大西洋をまたいで広がっている
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