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本屋のカガヤの本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ネギっ子gen
47
【「異界」を鍵に】ガタリ、中井久夫の生命論、べてるの当事者研究を重ね合わせ、精神医療やケアの本質について探究した書。巻末に、引用・参考文献。<私たちが心を病み、「あたりまえ」の世界を失うとき、そこには必ず異界の扉が開いている。多くの「心のケア」においては、この異界の存在を見ないようにしたり、その扉をなんとか塞ごうとしたりすることに力が浪費されてきた。しかしその結果、かろうじて「あたりまえ」の世界が維持できていたとしても、それと引き換えに、生命の輝きはくもり、ただ生かされるばかりの存在になってしまう>と。⇒2025/03/01
shikashika555
22
Ⅰ は興味深く読めたが、Ⅱ辺りから飛ばし読みになってしまった2025/01/09
遊々亭おさる
19
精神を病んだときに彷徨い込んでしまうのは幻聴や妄想などが渦巻く闇。これらを薬で押さえ込んで排除しようとする医療と対極にある『べてるの家』の「あってはならないもの」をつながりの回復するための手段とする当事者研究から、民俗学やエコロジーなどを網羅し、精神医療のケアの在り方を説く一冊。精神医療の世界は幅広く奥が深い。少なくとも専門バカでは務まらない仕事なんだろうなと。浅学の自分には難解な哲学書を読んでいるようで理解の範疇を越えているため感想を書く資格はないのだけれど、医療が持つ傲慢さの対極にあるのがケアかなと。2024/11/19
msykst
16
近代合理主義は「存在」と「実体」を切り離したのであり、両者の結びつきを取り戻すための概念がケアとエコロジーだと。精神医療の現場においてそれは「自己」と「世界」に対応しており、近代の精神医療が切り離した両者の結びつきを取り戻す実践として、中井久夫、べてるの家の当事者研究、ガタリが紹介される。本書が「異界」と呼ぶのは、「実体」や「世界」の流動的な様の事である。特に中井久夫へのリスペクトを強く感じたし、色々勉強になってよかった。2024/10/01
きゅー
5
精神障害者に立ち現れる「異界」を、レイン・ガタリ・中井久夫・べてるの家の当事者研究で横刺しする。障害者の個々の症状をそれぞれ別個のものとして対処するのではなく、その人の調和を取り戻すという全体論的な観点から見通す。そこでは病気を悪、健康を善とする二元論的な立場から離れ、精神疾患を人生における「旅」または「プロセス」として描く。「ケアをひらく」シリーズの一冊として、これまでの内容を総括するような内容になっている。ただし著者2名の共同執筆のためか、所々でそれぞれの専門分野が顔を出して理解しづらい部分もあった。2024/11/25