感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アキ
93
日本の精神医療が世界の中でも入院医療中心であることは周知の事実であり、長期入院した精神障害者も退院を希望しない施設症になっている。重度の精神障害者の地域生活を24時間365日支える包括型地域生活支援プログラム・ACTで働く看護師、精神科医、精神保健福祉士へのインタビューを元に、治す医療ではなく、暮らすことを見据えた粘り強い活動を紹介し、その原理を考察したレポートである。科学としての疾病と捉えるか、当事者の視点から病いと見るか、解釈こそが鍵と説く。専門職の医療者はむしろ認知の歪みがある、とも言えるのである。2024/08/21
kuukazoo
17
重度精神障害者の地域での生活を多職種チームが24時間365日支援する「ACT」というプログラムに携わる医療専門職へのインタビューを通し長期入院や薬物療法とは異なる彼らの現場での実践や考え方について考察する(著者も看護師)。医療による一方的な管理やコントロールになりがちなところを踏みとどまるため「待つ」とか「忍耐」とかあえてしんどい道を通り、症状を「病気」ではなく「困りごと」として捉え、「治る」より「社会生活していく」ことを目指す。ACT自体初めて聞く言葉で、読んでて「大変や...」というのが正直な印象。2024/10/05
すくすく
13
患者さんが病棟で不安がるので、神社でお札をもらってきて、入口に貼ったら落ち着いた、植物好きな患者さんにシイタケ原木を持ってきて一緒に収穫した。一見破天荒な対応に見えるけれど、患者ひとりひとり症状や環境全体を俯瞰して最適な選択肢を選び取る医療者たちに驚かされる。医療書やセオリーにとらわれず、自分自身に何が出来るかを考え抜いてるのが伝わってくる。新しい視点がたくさん詰まっていて他業種ながら面白く読めた、良い本2024/10/20
てくてく
7
精神疾患を持つ人を本人の意思とは関係なく入院させる、あるいは薬などによって状況が改善すればいい、ということではなくて、彼らを地域で暮らす上で困っている人であり、彼らが何に困っているのかを聞き取り、あるいは理解して、そこに手を貸すという姿勢が、精神医療としては新鮮だった。重度精神障害者の地域での生活を多職種チームが24時間365日支援する「ACT」に参加する人へのインタビューおよび看護師でもある著者の考察から成る一冊。マンパワーは必要になるけれども、こういった医療がもっと普及することが望ましい。2025/02/20
つきもと
5
すごい本でした…! 重度の精神症状を有する人たちの地域生活を支える5名の医療関係者へのインタビューを通して精神医療の在り方を考えるといった本ですが、実践を通したインタビューに重みを感じます。本書の内容は医療に限らず非対称正を持つ領域に不偏なもののように思いますが、人として生きていくことの意味を考えてしまいました。2024/09/09