出版社内容情報
ベストセラー『独立国家のつくりかた』などで注目を浴びる坂口恭平。きらびやかな才能の奔出の一方で、鬱期には強固な自殺願望に苛まれ外出もおぼつかない。青年期から躁鬱病に悩まされてきた著者は、試行錯誤の末、この病はもはや自分では手に負えないと諦め、「意のままにならない『坂口恭平』をみんなで操縦する」という方針に転換した。その成果やいかに! 著者自筆イラスト77点一挙収載、涙と笑いと感動の当事者研究!
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
harass
64
レビュで気になり借りる。初読みの著者「建てない建築家」のネット連載されていた日記。躁鬱病であることを公言している著者の日常を描く。躁状態の彼の奇行は、愚者か天才だ。文章がキレがあり「解像度が高くなる」。自身が病気であり普通でないことを悲しんでいて、どうしようもない絶望と開き直りを見せる。なにやら、英米小説や映画で出てくる、とんでもない行動をする人物を見ているように思う。何度も自殺を考えていたそうだ。ギリギリのところでの語りが切実で心を打つのだろう。彼を助ける周りの人たちもまた大変だ。ぜひおすすめ。2017/05/04
ユメ
36
鬱期の日記を読むと、絶望が病気による誤認知だと理解していても抜け出せない切実さが、自分を見ているようだ。一転して、躁時の文章は輝いている。そして私は才能迸る坂口恭平に嫉妬する。私は鬱しか知らない。躁鬱の辛さを知らないからこそ、憂鬱な私は無責任に躁状態の彼に妬いてしまう。でも、私は坂口恭平にはなれない。私はこのままの私として生きるしかないのだ。苦しみが創造のエネルギーになることは、誰しもの希望になると思う。もっと辛い時にはこんなこと忘れてしまうだろうけれど、死にたくたって幸福に生きて、鬱の花を咲かせたいね!2014/09/28
くさてる
12
躁のときのまさに表現者ならではといわんばかりのパワフルで活動的で多幸的な記述だけ読んでいたら、あるアーティストの個人的な記録としか思わなかったかもしれない。けれど、そのその文中にもところどころ虫食い穴のように浮かぶ尋常でなさが引っかかる。そして、不意に差し込まれる鬱のときのようやく書いている、という文章の重苦しさに、ぐいっと引き込まれてしまう。落ちているひとが無防備に読んだらそのまま一緒に滑り落ちていきそうな負の力。制御を無くしたジェットコースターのようなその変化に、読み続けずにはいられませんでした。2014/03/09
paluko
8
「まだ自転車に乗ってたい。パパ、仕事やめてよ」(158頁)などと口にする魔性のコドモ・アオの存在が面白い。良さげなイタリアンレストラン(サイゼリアに非ず)で「これからもときどき、この店に来ようね」(177頁)とか、自家用車(それもフォルクスワーゲン)を買って欲しいと要求し、却下されてヴィレッジヴァンガードゆめタウン店の店先で泣く(172頁)、果ては「余は城がほしい」(215頁)とか。グリム童話『ひらめ』のおかみさん顔負けだな。2024/08/04
みったん
7
あえてゆっくりと、2週間もかけて読んだ。かみしめるように読んだ本。坂口恭平の躁鬱のドタバタ本でありながら、それ以上に家族の物語。時々、苦しくてたまらなくなった。そして嫉妬した笑!こんなに素敵な躁鬱人生があるのかと。私も選ぼうと思う。フラットで何も感じないよりは、振り幅が大きくてしんどいけど、幸福をじんわり感じられる人生のほうを。両極を生きる。躁でも鬱でも、その両方を大事にする。いやーそれにしてもすごい本に出会ったな、と思う。生(なま)に出会える日記文学だ。(と思う。虚構もあるにせよ)2013/12/22
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