出版社内容情報
当事者本人を超えて、専門職・研究者の間でも一般名称として使われるようになってきた「当事者研究」。その圧倒的な感染力はどこからくるのか? それは客観性を装った「科学研究」とも違うし、切々たる「自分語り」とも違うし、勇ましい「運動」とも違う。本書は哲学や教育学、あるいは科学論と交差させながら、“自分の問題を他人事のように扱う”当事者研究の魅力と潜在力を探る。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ネギっ子gen
62
「ケアをひらく」シリーズ。「べてるの家」発の「当事者研究」を、「専門知」サイドの人たちが研究した書。<この当事者研究は独特の感染力を持っている。精神障害や他の障害を持つ当事者の間に広がりを見せていることがそのことを示している。しかし当事者研究が感染するのは障害者だけではない。当事者研究とは、苦悩を抱える当事者が、苦悩や問題に対して「研究」という態度において向き合うことを意味している。苦悩を自らのものとして引き受ける限りにおいて、人は誰でも当事者であり、当事者研究の可能性は誰に対しても開かれている>と。⇒2023/09/06
香菜子(かなこ・Kanako)
34
当事者研究の研究。当事者研究の概要や当事者研究の意義、当事者研究の重要性がわかりやすくまとめられた良書です。何事も自分の価値観や常識だけで傲慢に決めつけるのではなく、他人や当事者の価値観や常識、意見を謙虚に聞く姿勢が大切。2018/11/04
ころこ
23
「当事者研究は、「研究」という形をとることによって、自分の問題に向き合うと同時に、問題を「棚上げ」することが可能になる。」ここには正反対の力が働いています。前者を「当事者」とすれば、後者は「研究」ということになります。ともすると、前者による当事者の権利主張が強調され、その様に読むことが当然のように感じられます。しかし、もっと可能性に開かれるとしたら、対象化されることで突き放し、開放性によって自身との付き合い方をみつけていく、当事者のことをむしろ当事者に囚われることなく考察する「研究」に着目すべきでしょう。2020/09/26
踊る猫
18
発達障害者当事者として興味深く読む。当事者が支援者に対して一方的に丸投げするのではなく、自己に起こっていることを現象としてどう捉えて、しかし引き受け過ぎずに他人を頼って解決させていくべきなのか。孤独に苦悩することが病を拗らせてしまうこと、弱さを吐き出せる場はもっとあっても良いのだということを本書からは学ばされた。個人的には前半部のべてるの家での取り組みに興味を抱く。発達障害と統合失調症は繋がらないようで、実は「仲間に頼る」ことを必要としているところで共通するのではないか。これからは積極的に弱さを吐き出そう2017/12/31
壱萬参仟縁
6
精神障害をもつ人の当事者性のある学問は2001年~始まったという(003頁)。いくら支援しても、本人が自立・自律していけなければ仕方ないと思える。他の途上国貧困問題、中山間地域問題への接近にも参考になりそうだ。研究も他者との共同作業(022頁)。問題解決や反省をしない。北海道浦河町のべてるの家で(074頁)。自分でできることは、自分でする。生き方、自由の幅を教えるA.センのケイバビリティ(082頁)。自閉症患者が苦しむのは、感覚・知覚異常(部分と全体の統合)(095-6頁)。理解していきたい。共生社会像。2013/04/15
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- 和書
- 源氏物語の女(ひと)