出版社内容情報
思想家フェリックス・ガタリが終生関わったことで知られるラ・ボルド精神病院。世界中から取材者が集まるこの病院内を、一人の若い日本人女性が自由に撮影することが許された。彼女の震える眼が掬い取ったのは、患者とスタッフの間を流れる緩やかな時間。それは《フランスのべてるの家》ともいうべき、やさしい手触りを残す。ルポやドキュメンタリーとは一線を画した、ページをめくるたびに深呼吸ができる写真集です。
内容説明
世界中から取材者が集まるラ・ボルド精神病院の内部を、一人の日本人女性が撮影することを許された。やさしい手触りを残す患者とスタッフの間を流れる緩やかな時間。ルポやドキュメンタリーとは一線を画した、深呼吸ができる写真集。
著者等紹介
田村尚子[タムラナオコ]
写真家。1998年に初の個展を開催。以降、国内外での展示、活動を続ける。2010年には個展『ソローニュの森』を開催(タカ・イシイギャラリー京都)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
けんとまん1007
62
ケアとは何だろう・・と、改めて考える。何気なく使う言葉の一つ。そこにあるのは、ケアする人とされる人という関係性のように思う(一般的に、そう思われているのかと思う)。この1冊から感じるものは、そういう関係性もあるが、それ以上に、この場を共に作っているということ。文章の中に書かれている言葉が、胸を突く。如何に自分の思考が固いのかを考える。2023/10/15
ネギっ子gen
47
「シリーズ ケアをひらく」の一書。写真集(中のエッセイも素敵)です。その舞台は、フェリックス・ガタリが終生関わったことで知られる、フランスのラ・ボルド精神病院。“社会の檻”とは、全く違う時間が流れる場所――。病院長への手紙。<何が正常かわからないという冒険、曖昧な混乱、複数の時間が交差する接点が作る歪みの中に何があるのかを問いかけてみたいと思っています。それは、精神病院という異境のルポルタージュなどではなく、あくまでラ・ボルドが内包する「もうひとつの時間」と「さらなる眼=体験」を記憶するために、です>。⇒2021/07/19
魚京童!
29
精神を病んだ方が、人間らしい生活をしているのかもしれない。まともな精神ならこんな都会生活できないでしょ。2018/10/14
rors(セナ)
10
フランスにある精神病院であるラ・ボルド病院を丁寧に撮影した写真集と、著者によるエッセイ。森の中にある病院でなんなら少しオシャレな感じまである。それと何度見ても患者と医療スタッフの区別がつかなかった。病院スタッフが私服だから…だし、そのフラットさもこの病院の大きな特徴かな。何人かで自転車で出かける場面があるんだけど、その時の街の人たちの彼らを見た反応が、病院外からの視座として見える。食堂の概念がとても良かった。2024/12/25
きゅー
9
フランスのラ・ボルド精神病院を舞台とした写真集。この病院において患者は、自身の創造性を発揮できるよう促され、 医者と患者の関係が対等であるような環境が醸成されているという。たしかに大判の写真からは、自然の中で暮らす患者たちの穏やかな生活がよく見て取れる。この「シリーズ ケアをひらく」の中で写真集という形態は特殊だが、彼らの様子からケアのあり様を想起できるような一冊ではある。ただしこの病院について概略だけでも説明があったほうが理解されやすいのではとも思われた。2023/07/06