出版社内容情報
究極の身体ケア
言葉と動きを封じられたALS患者の意思は、身体から探るしかない。ロックトインシンドロームを経て亡くなった著者の母を支えたのは、「同情より人工呼吸器」「傾聴より身体の微調整」という即物的な身体ケアだった。
かつてない微細なレンズでケアの世界を写し取った著者は、重力に抗して生き続けた母の「植物的な生」を身体ごと肯定する。
*「ケアをひらく」は株式会社医学書院の登録商標です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
253
第41回(2010年)大宅壮一ノンフィクション賞 受賞。 ALS:筋萎縮性側索硬化症を発症した母の 介護の日々を描いた本である。 逃げられない現実に対して、人はどう向き合うべきなのか?ALSがもたらす死の恐怖.. 病の進行に伴う人格破壊と介護疲れ.. 高齢が急速に進む日本が抱える深刻な課題を 実体験に基づき、感情を抑えるかの ように書き込まれている、そんな重い本だった。2017/05/23
ネギっ子gen
56
この、読者の覚悟を問うかの如き(と、わたしは感じた)題名に怖じ気づき(軟弱者です…)長く読めなかったが、読メのお蔭で漸く読めた本。大宅壮一ノンフィクション賞受賞作。言葉と動きを封じられたALS(筋萎縮性側索硬化症)の母親に対する看取りの記録。時として、“無意味な延命”と話題になり、わたし自身も“延命治療”は望んでいない。といって、“延命治療”をする人を批判する気はない。そして30年以上前、母が脳溢血で亡くなる際には、「昏睡状態であっても、それでも母にはこの世に留まっていてほしい」と願ったわけで、ああ……⇒2021/02/20
さよちゃん
37
著者自身の母親が、ある日突然筋萎縮性側索硬化症…ALS発症する。その症状の進行度合いは個人差があるらしい…著者のお母さんは、進行が早く今まで出来ていた事が出来なくなり、眼球の動きも止まってしまう。 私の母親も、現在進行形で、進行が恐ろしいくらいに早く正直気持ちがついていけない。著者の川口さんや、妹さんはとても立派だったと思う。そして、お母様も。ウチの母親の病気が確定してから早半年が来ようとしてるけど…未だに朝起きると夢ならいいのに…って起きる私はまだまだ甘く覚悟が足りないって思った。2016/11/23
Our Homeisland
22
とても感銘をうけましたし、いろいろなことを知ることができて有意義で、それに面白い本でした。もっと多くの人に読んでもらいたい本です。おすすめです。今年の1月に高校の時の友人がALSになっていると知らせてきてから、いろいろと調べたり読んだりして、ある程度は知っている気になっていましたが、この本を読んでみて、ALSという病気の本当のすさまじさについてはほとんど理解できていなかったということを気づかされました。介護の現場で実際に起きていること、この病気が患者とご家族から何を奪って、何を強いるのかが、分かりました。2014/12/02
羽衣 空
21
ALSに罹ってしまった母の介護記録。ALSという病は知っていたが、さらにTLSという眼球さえ動かせなくなってしまう事があるのを知らなかった。最大の問題点は意思の疎通が難しくなる事。介護される側も、介護する側も、今の私では想像し難い。だが、著者はお母様がALSになった事を無駄にはしていない。こうやって本も書かれ、NPO法人を設立し、ALS協会の理事にも就任している。同じ境遇の方達の支えになっている事は間違いない。生死を考えさせられた一冊。2016/12/02