感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ra0_0in
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ホーソーンの長編4作の中では、個人的にはこれが一番面白いと思った。ロマンスとしての完成度は『緋文字』のほうが高いのかもしれないが、本作の場合、催眠術という疑似科学要素くらいしか超自然的な部分がなく、むしろ男女間の三角関係のもつれとか、結婚制度や財産権をめぐるいざこざとか、小説的(散文的)濃度が強い。読者のほうでよくよく注意してヒントを集めながらストーリーを再構成しないと何が起きたかほとんど分からないミステリー性や、一人称の語り手の設定など、ホーソーンをアメリカ近代小説の父とみる向きには何かと興味深い作品。2013/03/19