内容説明
パラノイアとは、“内的原因に発し、一貫した経過を示しつつ緩慢に発展する持続的で揺るぎない妄想体系で、その際、思考、意志および行動における明晰さと秩序が完全に保持されている疾患”である。精神病の理念型とでもいうべきパラノイアの問題へと気鋭の精神科医ラカンの関心が向かい、一挙に研究の飛躍をもたらしたのが1932年刊の本書である。
目次
1 問題の理論的・教義的位置(パラノイア性精神病群の歴史的形成;心理学的人格について批判;人格発展としてのパラノイア性精神病の考想;パラノイア性精神病を器質的過程によって引き起こされるものとみなす考想)
2 症例〓エメ〓あるいは自罰パラノイア(症例〓エメ〓の臨床的検索;症例〓エメ〓の精神病は器質―精神的〓過程〓を表しているのか;症例〓エメ〓の精神病は生活上の葛藤や特定の情動的外傷に対する反応を表しているのか;エメの人格の構造の異常と発達の固着がこの精神病の一次性の原因である)
3 人格の科学の方法と精神病の研究におけるその射程