出版社内容情報
独裁とは、誰かひとりがなにもかもをきめてしまうこと。本書では独裁者が支配する社会のおそろしさを、暗くならないようポップで明るい絵柄とともに説明している。人びとが自由でいられない独裁社会とはいったいどんな世界なのか、独裁者とはどんな人物のことなのか、独裁の世はどうやって終わるのか。巻末には、社会学者・佐藤卓己氏によるオリジナルコラムを掲載。若い読者に自ら考えることを誘いかけるスペイン発の社会絵本。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ルピナスさん
59
本書がスペインで発行された数年前まで、スペインは独裁政権下にあったため、本書の内容には二度とあの頃には戻りたくないと言う強いメッセージを感じる。見返しに描かれた24名の独裁者。独裁者は正義感溢れる清潔な指導者として政治の舞台に登場する。けれど、良いリーダーであり続けることと、誰もが誤りだと分かっていながらもうその動きを阻止できない独裁者に変貌するかは、昨今の状況を見ても予め防御が難しい。だから本書では、国民に健全な猜疑心が必要だと言う。絵本の形式によるとても奥深い本書。シリーズの残り3冊も読んでみたい。2022/07/07
たまきら
44
なんとわかりやすい文章、そしてイラスト!夫は「日本が登場しないね」と言うので、そこは議論になりました。自分は昭和天皇を傀儡、あるいは象徴ととらえているのですが、夫の中では当時神であった昭和天皇は独裁者として認識されているようです。日本は独裁政権よね。リアルタイムで。…こういう本を読んで国を批判していることがデータ化され、自分が非国民として管理下に置かれる日も遠くないかも。2022/12/16
ヒラP@ehon.gohon
25
読者に問題を投げかける絵本(?)です。 独裁者の特徴を極論的に語りながら、全ての要件を満たさなくても独裁政治は成り立つことを、暗に教えてくれています。 独裁政治が終わると「自由だ!」と絵本で幕引きをしながら、もう一度はじめに戻ってみようとか、独裁と変わらない国もあるとか、意味深長な解説部分がこの本のきもだと思いました。 独裁政治は、知らず国民が作り上げるものだなんて、意地悪なことも語っています。 試されていますね。2020/03/21
ころちくわ
21
あしたのための本シリーズ。読んで頭に浮かんだ人は安倍晋三さん。「独裁者はなかまには気前よく、賞を与えたり、土地をプレゼントしたりする。ときには、自分のものではないものまで、あげてしまう」「独裁が終わるのは、独裁者が死んだとき」あとがきに「民主主義の国でも独裁に近いことが行われている」とある。この本のスペインでの初版は1977年で、フランコによる独裁が終わった後だ。日本は民主主義国家だから、と安心してはいられない。2024/09/02
魚京童!
20
何が悪いのかな?私が独裁者だったら、私は幸せだよね。私の取り巻きも幸せだよね。みんなが私の取り巻きなら、みんな幸せだよね。そういうことだと思うけど。私に反対するから、悪いんでしょ。だってここは私の国。反対することは許さない。それだけでしょ。素晴らしい、独裁。私以上は存在せず、私のためにだけ世界が回り、私だけ…。私だけ。結局そういうことなんだと思う。みんなで決めるってなると根回しが大変だし、進まない。みんな違うからね。何が大切かなんて共有できない。民主主義が正しいとは思わない。宇宙人が支配することが素敵だと2019/11/24