内容説明
ドイツの貧しい少年はいかにして考古学の巨星となったのか。偉人の典型として語り継がれてきた、「シュリーマン伝」の虚構を剥ぎ、神話の彼方に浮かび上がる、人間シュリーマンの人生をたどる。
目次
シュリーマン論争の現在
独学の人の修行時代
大旅行から考古学的踏査へ
離婚、博士号、再婚
試掘溝と試練
ヒッサルリクへの突撃
プリアモスの宝
裁判と博物館めぐり
ミケーネのライオン
ロンドンの寵児〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
デューク
2
「シュリーマンの膨大な手紙や日記の中で、彼が発掘開始以前にトロイに関心を持っていたことを示す記述は存在しない」。そう語る筆者による、シュリーマンの評伝。 ハインリヒ・シュリーマンは伝説的な人物である。だが彼の言動をつぶさに追ってみると、自伝を書くたびに異なる逸話を物語り、虚言癖で様々な人物の信用を失い、事実を捻じ曲げることに良心の呵責を感じない人物であった。功罪共に巨大な、考古学の巨人の真実に迫る一冊。おすすめ2021/08/02
吉田恭
0
訳者の一人周藤がアニメ『T・Pぼん』「トロイが亡びた日」の歴史考証を担当しながら作中で「少年の日のトロイへの夢」神話を否定しなかったのが気になって読んだ。偉業を行うのは聖人ではなく一癖も欠点もある人間であるということ。商才、忍耐、強引、はったり、名誉欲あたりのシュリーマンの性格は、今ではイーロン・マスクとかが近そう。2024/10/30
Book shelf
0
『シュリーマン・黄金発掘の夢』同様、シュリーマンを別の角度で検証した内容であるが、本書はもはや「シュリーマン学」と読んでもいいくらい深い。というのも著者はシュリーマンの手紙、日記、調査報告などの史料を徹底的に検証し、幼少の頃の夢を不屈の精神で実現した人物という伝説的な覆いに隠された真実をあぶりだし、彼に関する多くの問題を提起したことで知られる研究者であるからです。2011/08/27